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クリスタルガラス、ソーダガラス、硼珪酸ガラスの違い|味わいにも影響する?

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飲み物を飲むときになくてはならいのがグラスです。


最近ではさまざまな材質のグラスが登場してきましたが、やはりその頂点といえる材質はガラスでしょう。独特の手触りや輝き、美しさはガラスにしか出せません。


では、グラスに使われるガラスにもタイプが存在することをご存知でしょうか?そしてその材質によって飲み物の味も変わってくることは?


本記事ではグラスに使用されるガラス材の種類とその特徴についてまとめます。


美味しいドリンクを楽しむために、誰かにプレゼントするときのために、ぜひ参考にしてみましょう。

クリスタルとガラスの違い

本格的にグラスの話に入る前に、まずはグラスの材質について考えるさいにも必要なクリスタルガラスという二つの言葉の意味について整理しておきます。


クリスタルとは結晶、特に水晶を指す英単語です。


いってしまえば雪なんかも結晶ですからクリスタルの一種です。


これと同時にクリスタルガラスという水晶のような輝きを持ったガラスを指すこともあり、そのあたりがごちゃごちゃになっている人も多いでしょうが基本的にはベツモノです。



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非常に神秘的な形をとる雪の結晶体=クリスタル


いっぽうのここでいうガラスとはケイ酸塩を主成分とする硬くて透明な物質を指します。


コップや窓などに使われ私たちの身の回りにあるいわゆるガラスですね。*1


このあと詳しく解説しますが、クリスタルガラスという分野があるためガラスとクリスタルはややこしくなりがちですが、クリスタルガラス(グラス)=ガラスであり、ガラス≠クリスタルクリスタルガラス≠クリスタルであることを把握しておきましょう。

クリスタルガラス、ソーダガラス、硼珪酸ガラスの違い

ガラスの分類法は複数存在するため一概にすべてを一括りにまとめることは難しいのですが、最も代表的でシンプルに区別する方法は化学組成によるものでしょう。


この分類法ではガラスの組成によって以下のように分類されています。

  1. クリスタルガラス
  2. ソーダガラス
  3. 硼珪酸ガラス
  4. その他


現在生産されているグラスの90%はクリスタルガラス、ソーダガラス、硼珪酸ガラスだと言われていて、そのうちソーダガラスが最も多くを占めています。


それぞれのガラスにはどのような特徴があるのでしょうか?

クリスタルガラス

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クリスタルガラスメーカー代表ともいえるバカラのタリランド

クリスタルガラスの定義と分類

クリスタルガラスはカリウム、珪酸、ソーダ灰に酸化鉛(レッド=lead)を加えて作られるグラスを指します。


特徴は①酸化鉛を添加することでガラスの融点を低くして成形を用意にする点②途明度と屈折率の高いガラスに仕上がる点です。


これによって非常に多様で繊細な成形が可能となり、輝きのある水晶(クリスタル)のようなグラスになるため、一般的にガラス製品でも特に高品質なものとして考えられています。


クリスタルガラスの定義は国によっても差異がみられますが、日本ではクリスタルガラスに関して社団法人 日本硝子製品工業会が定義しています。


これによるとクリスタルガラスの定義は

クリスタルガラスとは、酸化鉛を主要成分として含むガラス、および酸化カリウム、酸化バリウム、酸化チタニウムなどを主要成分として含むガラスで、高い透明度を有し、かつ屈折率nDが1.520以上(註-1)*2で光沢のある美しい輝き、および澄んだ音色で特徴付けられる。
クリスタルガラス定義 日本硝子製品工業会 2009年9月25日より


とされています。


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日本硝子製品工業会によるクリスタルガラスの定義


さらに日本硝子製品工業会の定義によって、クリスタルガラスはフルレッドクリスタルガラスレッドクリスタルガラスセミレッドクリスタルガラスの3つの分類がなされています。



日本のクリスタルガラスでは酸化鉛を含まない「カリクリスタルガラス」、「バリウムクリスタルガラス」、「チタンクリスタルガラス」も認められていて、それぞれ主成分に酸化カリウム、酸化バリウム、酸化チタニウムが使用されます。

クリスタルガラスの特徴

クリスタルガラスは非常に強い輝きがあり指で弾くと(あまりオススメしませんが)高音の澄んだ音を放ちます。


酸化鉛が多く含有されている製品はより美しい仕上がりを持つこともありますが成形には洗練された技術を必要とします。


最近では機械が自動で生産するマシンメイドも増えていますが、職人の手作業によって作られるハンドメイドも根強い人気があり、高級ガラスメーカーでも廉価版のハンドメイドものと高価で稀少なマシンメイドものを別ラインナップしているところも少なくありませんね。

ソーダガラス

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ソーダガラス製のグラス


クリスタルグラスと並んでよく聞くグラスのタイプがソーダガラス(ソーダ石灰ガラス)です。


現在では最も汎用性の高いグラスとして量産されていて、多くの人が日常的に使うグラスのほとんどはソーダガラスに分類されると思われます。


飲食店などでも高級店やかなりの拘りがある店で無い限りソーダガラスのグラスが多く使用されているのではないでしょうか。


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ソーダガラスのグラスでも最近よく見かける「うすはり」系のグラスのように高品質なものも多い


この材質のグラスはソーダ灰,石灰石,ケイ砂をメインに作られているグラスで硬くて軽くコストがかからないのが特徴です。


一方で急激な温度変化には極端に弱いという弱点もあります。


一般的にはクリスタルガラスと比べると安価で低品質と思われている節もありますが、日本の木村硝子の木勝シリーズなどに代表されるように、クリスタル系グラスに負けず劣らず見事な品質を持っているものも存在します。


硼珪酸ガラス

ソーダガラスに硼酸(ホウサン)を加えて作られるガラス。


ソーダガラスの温度変化への弱さを克服したタイプのガラスで、耐久性と耐熱性が高いため湯呑みグラスや化学系で用いられる実験機器用のガラス製品に用いられるのが一般的です。


屈折率も低く強度が高い分だけ厚みがあることも多いため見た目には安価なグラスに見えがちです。


耐熱温度差120℃以上の耐熱ガラスと耐熱温度差400℃以上の超耐熱ガラスに分類されることもあります。


熱膨張率を小さくすることでガラスへの変形を防げればいいので必ずしも硼酸を混ぜる必要はないのですが、現状では耐熱グラスのほとんどは硼酸を混ぜ込んだ硼珪酸グラスに分類されているようです。


食洗機などにも対応している商品も多いため日常使いにも便利でしょう。

クリスタルやソーダ・・・グラスの種類によって味は変わるのか?

一般的にはクリスタルグラスが最も芸術性と機能性に優れていて、コスパ面でソーダガラス、耐久面で硼珪酸ガラスにそれぞれ軍配があがると考えられています。


では味わいにおいてはグラスの材質ごとの違いがあるのでしょうか?

クリスタルガラスはお酒の持つポテンシャルを引き出す

クリスタルガラスとソーダガラスの最大の違いは表面の凹凸にあります。


クリスタルガラスはその製法上、表面に目には見えない凹凸が生じています。一方のソーダガラスはツルツルに近い状態です。


一見するとツルツルの方がキレイで良いのでは?と思うかもしれませんが、ワインやウイスキーのようなお酒を楽しむ上では必ずしもそうとは言えません。


微小な凹凸が表面にあることで、液体がその凹凸の中にまで広がります。結果的にグラス内側の表面積が大きい(液体が薄く広がるイメージ)ことになり、ワインやブランデーの持つ複雑な香気成分や味わいが放たれていきます。


一般的にこのようなお酒の変化を「ひらく」などと表現しますが、複雑で味の濃い、ポテンシャルのあるお酒になればなるほどグラス表面にある些細な違いが味わいに変化を与えてくれると考えられます。


この違いは、実際に似たような形のソーダガラスとクリスタルガラスを用意してワインを注ぎ、軽く回した後に舌に落ちいていく液体の様子を見れば分かりやすいでしょう。


ソーダガラスがさらっと落ちいていくのに対し、クリスタルガラスに入れた液体は少し粘度を持っているかのようにゆっくり落ちていく様子を観察することができます。

どちらが良いかはお酒やシチュエーション次第

確かにクリスタルガラスはお酒のポテンシャルを発揮させる実力を持っていると考えられますが、例外なくクリスタルガラスが優れているかといえばそうとも言えません。


お酒によっては空気との接触面が大きくなる可能性のあるクリスタルガラスはマイナス効果を生んでしまうこともあります。


クリスタルガラスは扱いにも注意が必要ですし、日常使いなどカジュアルなシーンでは気を遣ってしまって使いづらいかもしれません。


例えば家で少し良いやお酒を楽しむときはクリスタルガラスのグラスを使って、普段使いはソーダガラスにするなどの使い分けをしていくといいかもしれませんね。

代表的なクリスタルガラスブランド

グラスの花形となるクリスタルガラスを製造するメーカーは国内外合わせて挙げていけばキリがありません。


ここではちょっとグラスをかじったことのある人なら大体は聞いたことがあるであろう代表的なメーカーをピックアップしておきましょう。

バカラ

フランスのガラスメーカーで、おそらく日本で最も知名度のある海外のガラスブランドでしょう。


製造された商品のうち消費者の手に渡るのは6割程度と言われるほど製品に対するこだわりがあります。




酸化鉛を3割以上含んだフルレッドクリスタルガラスの代表であもり、クリスタルガラスに興味のある人にとっては憧れのブランドのひとつでしょう。


ラリック

同じフランスを代表するガラスメーカー。もともとはジュエリーを出掛けていたルネ・ラリックがガラスへ興味を持ったことがきっかけとなり、今や世界中に熱狂的なファンのいるブランドとなりました。


中に注いだ液体を際立たせることを主眼に置いているバカラに対し、ラリックはグラスそのものが芸術性をもったデザインとなっていて、同じフランスのガラスメーカーでもグラスに込める思いは対照的なものとなっています。


サンルイ

バカラと対を成すといわれるフランスのガラスメーカー。


バカラが男性的なフォルムのアイテムが多いのに対し、女性的で優雅なデザインが多い印象。


じつはバカラよりも歴史は古く、一時期経営難となったバカラを助けた経緯もあり昔のアイテムのなかには両者の区別がつかない商品も存在するほどです。


今のバカラの名声があるのもサンルイあってのものだったんですね。


現代ではあのエルメスのグループブランドとなっており、日本では知名度はさほど高くないですがそのクオリティ間違いありません。


ロブマイヤー

1835年にはハプスブルク家から皇室御用達の称号を賜って以来、世界中の王室やセレブから愛用されるロブマイヤー。オーストリアのブランドで繊細ながら圧倒的な存在感が特徴的。


グラス好きであれば一度は手にすることを憧れるグラスとも言われています。

リーデル

オーストリアを代表するグラスメーカー。


同じオーストリアのブランドでもロブマイヤーがトップクラスの高級品とすると、リーデルはまだ手を出しやすいブランドでしょう。


グラスそのものの芸術性よりもワインをはじめ、お酒そのもののポテンシャルを引き出すことに腐心しており、ありとあらゆるお酒に対応した機能性の高いグラスを多数展開しています。


すべてがクリスタルガラス製ではありませんが、ここで挙げたブランドのなかでは比較的いろいろなタイプの飲食店でもよくかけることができるため、知らぬうちに使ったことのある人は多いかもしれません。


カガミクリスタル

日本初のクリスタルガラス専門工場を構えたメーカー。


赤坂迎賓館や在外公館などに商品を提供しています。


日本を代表するガラスメーカーでもあり、引き出物などでも目にする機会は多いでしょう。

クリスタルガラス、ソーダガラス、硼珪酸ガラスの違い|味わいにも影響する?のまとめ

代表的なグラスの分類となるクリスタルガラス、ソーダガラス、硼珪酸ガラスの違い。そして実用面においてどのような差があるのか、ということについて見てきました。


これでガラス、グラスについて初歩の初歩となる基礎知識はついたのではないでしょうか?ぜひ参考にして自分にあった、自分の好きなグラスを見つけられることを祈っています!


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www.oishikerya.com

*1:ケイ酸塩以外を主成分とするアクリルガラス、有機ガラスなどもあるがここでは割愛します

*2:酸化鉛を含まず酸化カリウムを主要成分とするクリスタルガラスはこの限りではない。