ガラスアートやジュエリーに興味のある人なら誰もがその名を聞いたことのあるアーティスト、ルネ・ラリックが生み出したブランド「ラリック」。
今なおひとびとを魅了し続ける工芸作品の数々はいったいどのような特徴を持っているのでしょうか。
筆者もこよなく愛するラリックの世界とその魅力を解説していきます。
ルネ・ラリックとそのブランド「ラリック」
ラリックとはフランスの宝飾・ガラスデザイナーであるルネ・ラリックとその作品、さらには現在にまで続くその名を冠する工房ブランドです。
ラリックというと日本では高級ガラスブランドとして知れ渡っていて、バカラほどの知名度はないもののある程度ガラス工芸に詳しい人であれば名前くらいは知っているブランドでしょう。
バカラのように町おこしとして始まったブランドとは異なり、あくまでもルネ・ラリックというひとりのデザイナーの手から生まれたのが特徴。
非常に個性的かつ芸術的な側面を持ち合わせており、工芸品ブランドとして熱狂的なファンも少なくありません。
またテーブルウェアや日常用品などにガラスを取り入れた製品をたくさん残しており、現代でもグラスやトレーをはじめて多くのラリック製品がレストランや家庭で特別な時間を演出するのに活躍しています。
ラリックの歴史
ラリックをひとつの工芸ブランドとしてとらえた時、その歴史は大きく分けてふたつのパートに分けて考えられます。
それは「宝飾デザイナー」としてのラリックと「ガラス工芸家」としてのラリックです。
ここではラリックの歴史についてまとめてみました。
宝飾デザイナーとして始まるラリックのモノづくり
1860年、フランス、シャンパーニュ地方マルヌ県アイ村にて生を受けたルネ・ラリックはもともと絵師を志していましたが、母親の勧めもあってパリの宝飾家「ルイ・オーコック」に弟子入りし修業、30歳を越える頃にはフリーランスとして活躍を始めます。
当時宝飾品というと金や銀を用いたものが主流だったなか、時にはカラフルな石や安価な材料も使いながら新しい宝飾デザインを提示し続けたラリックはさまざまな有名顧客を獲得しながら知名度を高めていきます。
1897年にはレジオンドヌール勲章を受賞、1900年のパリ万博でき世界的に宝飾デザイナーとして高い評価を得ます。
ガラス工芸の道へ傾倒してゆくラリック
宝飾デザイナーとして確固たる地位を築き上げたラリックですが、彼の偉大なところはそこで満足せずにガラス工芸という新しい分野に挑戦したことにあります。
いまとなってはラリックは宝飾デザイナーというよりもガラスデザイナーとしてのほうが認識が強いのではないでしょうか?
1907年にはフランソワ・コティという香水商のタッグによる香水瓶を作り始めます。
これがラリックをガラス工芸の道へと誘う大きな転機でしたが、そもそもラリックがガラス制作へ本格手に乗り出したのは20世紀になってファッションがシンプル路線に切り替わり、宝飾品の需要が落ちたことにも起因しているといわれています。
フランソワコティといえば香水ファンなら知らぬ者のいないブランド「COTY」の創設者。写真はコティのワイルドムスク。
宝飾の世界でも独自性の強いセンスで新しいデザインを切り開いたラリックはガラスの世界でも「型吹き成型」「プレス成型」といった新しい成型方法を完成させたり、「オパルセントガラス」というガラスをふんだんに取り入れるなど従来にはないガラス作品を生み出しました。
香水瓶からはじまり、時計、鏡、化粧道具から建築材とあらゆる生活に関わるものにガラスを取り入れた作品を発表したパイオニアでもあり、ガラス工芸の基礎を作った人物であるとも言えるでしょう。
ラリックの生涯とその作品に興味のある方はぜひ一度箱根のラリック美術館へ訪れてみてください。
なかなか見ることのできないラリックの作品を宝飾品からガラス工芸品まで体系的に目に出来る貴重な場所です。
ラリックのガラス作品の魅力
ラリックの魅力はなんといっても日用品にアートを組み込んでいる点だと筆者は考えています。
動物・女性・植物といったモチーフをガラスにふんだんに取り入れながら、時には一般的ではないガラス使いをしながら作られるラリックのアイテムは必ずしも実用性において優れているとは言い難い作品も数多くあります。
ラリックの魅力のひとつは動物や女性、植物を作品に散りばめている点にもある。ガラス細工に繊細に刻まれたモチーフは中に入れられるモノによって表情を変えて浮かび上がり、ひとつの芸術作品のようになる。こちらはツバメをモチーフにした花瓶。
しかしその繊細かつ優雅、そしてアーティスティックなデザインは使う者、見る者を虜にしてしまう魅力にあふれています。
あくまで日常的に使う道具にそうした芸術性を持ち込んだことにラリックの魅力はあると思います。
グラスひとつとっても、たとえばバカラをはじめした一般的なグラスは中に注がれる液体を最大限に美しく魅せるためのものであるのに対し、ラリックはグラスとそこに注がれた液体が一体となって完成する美しさを追求しています。
ステムの細さと装飾によって多少の持ちづらさすらも感じるトスカ。しかしその美しさは圧倒的で、注いだ液体と相まって素晴らしい一杯を演出する。
ただ単に使いやすさや実用性を求めのであればラリックのアイテムは必ずしも適したものにはなりませんが、そうした実用性を多少犠牲にしてでも得られる美しいデザインの数々は使うものを魅了してやみません。
レストランやバーなどで使われるのはもちろんですが、日々の生活のなかや贈り物として使ってもセンスが光るチョイスに周りからの評価も変わってくるのではないでしょうか?
ラリックを代表するグラス
日常的に使えるガラス作品を目指したラリック。
さまざまなガラス作品を残しましたがあくまでも高級品であることに間違いはなく、なかなか日用品として浸透したものは少ないといえるでしょう。
ここでは汎用性の高いテーブルウェアに限定し、ラリックを代表するアイテムを市場在庫のなかから少しチェックしてみましょう。
特別な時のテーブルウェアからギフトまで、おさえておいて損はありません。
バンブー ワイングラス
竹をイメージしたステム部分が特徴的な"バンブー"シリーズのワイングラス。
このシリーズはワイングラスやブランデーグラスなどで展開されていて筆者も使ったことがありますが非常に持ちやすいく安定性も高いため、ラリックのグラスとしては実用性が高いアイテムです。
ランブイエ シャンパングラス
ねじれたステムが特徴的なシャンパングラス。ラリックはシャンパーニュ地方出身の人物なので、ラリックグラスでシャンパンを飲むなんていうのはエスプリが効きすぎていて格好いいですね。
ギフトにチョイスしてもいいのではないでしょうか?
ランブイエはワイングラスも展開されています。ワインを注ぐには少し使いづらい印象ですが、カクテルグラスやデザートグラスとして使いやすいです。
ローズ タンブラー
薔薇柄をフロステッドという技法でレリーフしているグラス。
ラリックらしい優雅なデザインが非常に印象的で、中に液体を注ぐと薔薇模様がより立体的に浮かび上がるラリックらしいギミックに溢れた作品です。
タンブラーとしてもロックグラスとしても使える絶妙なサイズ感も素敵で、汎用性の高いグラスでしょう。
ずっと欲しかったラリックの薔薇柄のフロステッドレリーフグラス。
— "おいしい"を探求するメディア「おいしけりゃなんでもいい!」 (@bollet_jp) September 19, 2019
タンブラーとしてもロックグラストとしても使えるし、なにより美しすぎない?!
こんなんなに入れて飲んだって美味しく感じるよって感じ。 pic.twitter.com/hXEgHzf0jZ
デイジー タンブラー
可愛らしい小さな花のモチーフがいくつも入ったタンブラー。
非常に繊細ですが華やかなデザインで、筆者もずっと欲しいと思っているデザインのひとつです。
ブルゴイユ リキュール・冷酒グラス
1930年ころから作られているデザインでラリックを代表するシリーズのひとつ。
幾何学模様が特徴的なシンプルな作りで、こちらはリキュールグラスサイズです。
なかなかリキュールを楽しむ機会は少ないかもしれませんが、リキュールグラスは冷酒を飲むにも適したサイズ(御猪口サイズ)なので、たまには洋食器で冷酒をやってみてはいかがでしょうか?
ラリックが銀座に店舗をオープン
1888年から2018年で130年の歴史を迎えることとなるラリックが6月27日に東京は銀座に旗艦店としてラリック銀座をオープンしました。
あまたのブランドが軒を連ねる銀座5丁目に展開される店舗は1、2Fの2フロア。
テーブルウェア、フレグランス、アクセサリー、 ホームアクセサリーといったラリックの製品を展開する共に世界的に名高いアーティストのコンテンポラリー作品と共にラリック作品を展示するスペースも展開し、ラリックの魅力を存分に味わえるスペースになっています。
ラリックに興味のある方は一度訪れてみても損はないことでしょう。
ルネ・ラリックの世界のまとめ
ラリックはアーティスティックな側面とあくまでも日用品を手掛けているという意味での庶民的な感覚のふたつを同時に持ち合わせていた人物、ブランドです。
いまとなっては高級メーカーの代表格となっていますがラリックの素晴らしい世界感を持ったアイテムをぜひご自宅やギフトにチョイスしてみるのも悪くないかもしれませんね。
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