前回「海外からの評価も高いジャパニーズウイスキーが外国産や混ぜ物だった?」という記事において、東洋経済新聞オンラインに掲載された記事に対するまとめをさせて頂きました。
筆者自身も改めてジャパニーズウイスキーについて調べる良い機会なり、最低製造量の規定など新たな知識を得ることが出来たわけですが、そのなかの海外から買い付けたウイスキーを混ぜてジャパニーズウイスキーとして販売する件に関して今回はもう少し掘り下げてまとめていこうと思います。
海外から買い付けたウイスキー=バルクウイスキー
上掲の記事内において、ジャパニーズウイスキーが100%国内生産されたものではなくても許される事、特に小規模の造り手は規定の製造量を達成すべく海外産のウイスキーを混ぜて販売しているものがあることなどを示しました。
これについては筆者も以前から話には聞いていました。これら海外からブレンド用に買いつけられるウイスキーはバルクウイスキーと呼ばれてい.るそうです。
現状ではラベルへの表示義務なども存在せず、消費者には一見して「純国産品」なのか「あくまで国内で製品化」したものなのか判断がつかない
バルクとは"大量、一括"というような意味合いを持つ言葉。バルクウイスキーの場合はシングルモルトのようにいわゆる気合を入れて作り上げる自慢の商品とは対照的なもので、大量生産のブレンド用、商売性を色濃く持ったウイスキーとでも言えるでしょうか
Scotch Whisky Associationのデータによれば、バルクウイスキーの量は年々増加しているようで、10年単位でおよそ4~5倍ほどになっています。もちろんそのすべてが日本に送られているワケではないのですが、単純に考えても世界的にウイスキー需要の増加、特に言ってしまえば工業的な商品の生産量が増加していることが推測されます。
ジャパニーズの重要増加によるバルクウイスキーの利便性
さて、日本はまだまだウイスキーに関しては歴史の浅い国だといえます。そうしたなかで蒸留施設自体も限定されており、国全体に大量の国産ウイスキーの在庫があるわけではありません。
一方でここ10数年で国際市場においても知名度を高めているジャパニーズウイスキーの需要に応えるべく、大手メーカーも躍起になって生産体制を整えているということは別記事でも少し触れたとおり。
サントリーなどの大手メーカーはともかく、いわゆる小規模生産でウイスキーを作っているメーカーはそもそものラインナップも少ないワケですから生産を調整するうんぬん以前の話。ここで活躍するのが生産量を増強できるバルクなるウイスキー商品の存在というワケです。
サントリーやニッカといった大手メーカーに並んで知名度を上げている秩父のイチローズモルトでも現在スタンダードランイナップにワールドブレンデットと記載された商品を展開しており、国外から買い付けた原酒をブレンドした商品を販売してラインナップを強化しています。
バルクウイスキー使用のジャパニーズは説得力をもたせられるか?
バルクウイスキーの使用自体は日本の酒税法的にも許されていますし、商売として業績を安定させるためにはもちろん単純に否定されていいものではないでしょう。
一方で、ジャパニーズウイスキーのブランド化が進む中で、同じジャパニーズウイスキーの括りの中にも海外産も混ぜた商品が存在する事は消費者にとっても気を付けるべき事実だと言えます。
特にウイスキーに対して知識が浅い人だと、日本的な名前のついたウイスキーをこぞってありがたがってしまう傾向があるように思います。しかし、中には海外産のバルクなどが混ざっている商品も存在するワケです。
こうした商品に、イチローズモルトのように分かりやすく「ワールドブレンド」のような表記を付けていればまだしも、中にはあたかも純日本製ですよと言わんばかりの商品も存在しているようで*1、この辺りはしっかりと販売側もラベリングを考えるべきなのではと思いますね。
今後ジャパニーズウイスキーをブランド化するうえで、国内外のファンに説得力を持たせることは大事なこと。そのためには海外原酒を使用している商品に関してはそれなりの表記や値段設定などをして、いわゆるブランドとしてのジャパニーズウイスキーと区別することも大切なのではないでしょうか?
まとめ
ジャパニーズウイスキーとバルクウイスキーについて、前回の記事からの流れでざっくりとまとめてみました。バルクウイスキーに関しては日本語記述の資料はほとんどなく、ウイスキーに精通した方のブログなどを通してしか情報を得ることは難しくなっています。メーカー側もわざわざ「ウチ、バルク使ってます!バルクは海外の量産品です」とは言わないでしょうからね。
業界内でこのようなことが問題視され、ジャパニーズウイスキーの規定に少しでも消費者にとって分かりやすい取り決めが今後なされるかどうか、ぜひ注目していきたいところです。
皆さんも「日本の企業がつくっているウイスキーは全て正義」という考えを改め、どのような背景の商品なのか、実際の味と値段のバランスはとれているのか・・・ということに注目した商品選びをしてみましょう。そのような意識が業界全体、ひいてはお酒に限らない日本産のブランド力を向上させることに繋がっていくはずです。
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