炭酸入りのワインといえばシャンパンというイメージを持っている方も多いことでしょう。
スパークリング(炭酸入り)ワインはシャンパン以外にもたくさんあるのに、どうしてシャンパンという飲み物がここまでスパークリングワインの代表として定着しているのでしょうか?
それはシャンパンは他のスパークリングワインにはない数多の魅力を持っているからなのです。
本記事ではシャンパンとスパークリングワインの違いを歴史、製法、味といった側面から明らかにしつつその魅力をわかりやすく解説していきます。
シャンパンの魅力がわかるスタンダードクラス(3000~5000円)のおすすめ銘柄を厳選した記事もあわせてご覧ください。
・「5000円以下の安くて美味しい辛口シャンパンを4本紹介」
・「初心者にもおすすめしたいコスパに優れたシャンパン銘柄8選」
- シャンパンとスパークリングワインの違いとは?
- シャンパンとスパークリングワインの味の違いはある?
- スパークリングワインとしてシャンパンを気軽に楽しんで欲しい理由
- スパークリングワインにはない ロマンチックなシャンパンの魅力
- シャンパンとスパークリングワインの違いのまとめ
シャンパンとスパークリングワインの違いとは?
シャンパンもスパークリングワインもどちらも発泡性のワインであることに変わりありません。
ではその違いはどこかにあるのでしょうか?
シャンパンとスパークリングワインの違い
シャパンの魅力について詳しく見ていく前に、まずはシャンパンとスパークリングワインの違いについて知っておきましょう。
上の図がシャンパンとスパークリングワインの関係をものすごくザックリ説明した図です。
スパークリングワインとは発砲性のワインの総称で、生産地や製法まで一切の指定はありません。
対してシャンパンとはフランスのシャンパーニュ地方で厳格な規格をクリアした発泡性のワインにつけられる呼称です。
正式名称はシャンパーニュ(champagne)で、生産国フランスでは正式名称「シャンパーニュ」と呼んでほしいと呼びかけています。
日本人になじみ深いシャンパンという略称は日本独自のもので、あまり海外でこの呼び方はしません。
世界のスパークリングワイン
スパークリングワインをもう少し細かくみてみましょう。
各国にはさまざまな発泡性ワインが存在します。
特にシャンパンのような呼称が決まっているものは、産地や製法においてある程度の縛りがあるのが普通です。
フランス国内のスパークリングワイン
例としてフランス国内のスパークリングワインの種類を見ておきましょう。
フランスではシャンパンを含めたスパークリングワイン全てを指してヴァンムスー(ヴァン=ワイン、ムスー=泡)と呼びます。
フランスにはシャンパン以外にも1975年にAOCでフランスの伝統的なお酒として認められているクレマンというスパークリングワインがあり、こちらはシャンパンと比べて熟成が短い傾向にあるため味はスッキリしていますが、その分安価にシャンパンに近い味わいを楽しめます。
製法以外にも気圧が3気圧程度とシャンパンと比べると発泡性は低いという特徴があります。
クレマンの代表的な産地であるジュラ地方のもの。価格帯もシャンパンの半分程度で瓶内二次発酵、シャンパンに近い味わいを楽しめる。シャンパンに近い気圧のものはムスーと呼ばれます。
ムスーもAOCに指定されているものは瓶内二次発酵でシャンパンに近い製法をとられているものもありますが日本で見かける機会は少ないですね。
さらに気圧の低いものはペティアンと呼ばれ、こちらはスティルワインと同じ区分で考えられることもあります。
フランスの法律、AOCについてはコチラwww.oishikerya.com
この先はシャンパンに限定してその特徴を見ていきますが、ここに乗せていないスパークリングワインも世界には多々あります。
しかしやはりその頂点に立つのはシャンパンであることに、今はまだ異論のある人は少ないのではないかと思います。
なぜならシャンパンにおける製法の基準は他のスパークリングワインを寄せ付けない非常に職人的なものであり、長い歴史を持っているからです。
歴史も分かる「シャンパン泡の化学」のレビューはこちらwww.oishikerya.com
シャンパンの歴史についてはここでは割愛。気になる方はシャンパンの歴史についても触れている「シャンパン泡の化学」、そのレビュー記事を参考にしてみてください。
シャンパンとスパークリングワインの味の違いはある?
瓶内で発酵を行い泡を自然発生させる
シャンパンの最大の特徴は、一度発酵させて作ったワインを瓶内でもう一度発酵させることで泡を液体内に閉じ込める製法にあります(=瓶内二次発酵)。
つまりシャンパンの泡は自然に発生したものであり、人為的にガスを入れて生まれたものではないのです。
これに対し、その他のスパークリングワインの多くは人工的に二酸化炭素をいれて作っています*1。
瓶内二次発酵に比べて人工的に作るスパークリングワインは手間もかからず安価ですが、二次発酵による旨味が生まれず、泡自体も荒々しいものが多い傾向にあります。
特別な土壌
シャンパンの造られるシャンパーニュ地方は特異な土壌を持っています。
長い時間をかけて海底から隆起した土地は石灰成分が多く、加えて比較的冷涼な地域であるため一概にブドウを造りやすい土地ではありません。
しかしそうした土壌で丁寧に作られたワインは酸味とキレを持ったスタイリッシュな味わいとなり、これに瓶内二次発酵や熟成といったシャンパン特有の工程を経ることでコクが加わります。
また栽培難度の高いこの地域では、基本的にワインを一部作り置きして保存し(リザーヴワイン)、これを混ぜ合わせながら一定の味わいを保てるようにしています(アッサンブラージュ)。継ぎ足しのうなぎのタレのようなイメージでしょうか。
逆にいえばスタンダードな商品でも古いワインを混ぜているため、シャンパンはどれもフレッシュワインではなかなか出し得ないない独特の深みを有しているのです。
甘口、辛口がある
シャンパンはドサージュといって味の調整のためにワインから作った甘いリキュールを加えるという工程があります。
この時に加えるリキュールの量で最終的なシャンパンの辛さ/甘さが決まります。
加える糖分の量で辛口からエクストラブリュット、ブリュット、エクストラセック(ドライ)、セック、ドゥミセック、ドゥーと分かれています。
これらの規格は必ずラベルに記されているので、シャンパンを買う際は必ずチェックしましょう。
辛口が好きな方はブリュット、甘口好きであればドゥミセックあたりは種類も豊富なので、探してみると好みに合う可能性も高くなりますね。
複雑な製造工程が生むバリエーション
シャンパンにはさまざまなブランドがありますが、多くの造り手のスタンダードな商品は複数のヴィンテージ、 複数の畑の葡萄、複数の葡萄品種をブレンドして味の均質化をはかります。
シャンパンでは8種の葡萄の使用が認められているが、基本的にピノグリ、ピノノワール、シャルドネという3種の葡萄を使用する。
特別に葡萄の出来が良い場合は単一ヴィンテージにこだわった「ミレジメ」と呼ばれる商品をリリースしたり、葡萄の品種の配合を変えたり、時には単一の葡萄品種のみにこだわって作られるものも・・・。
このように一見厳格なシャンパンの製法にはじつはさまざまな工夫の余地が残されており、造り手たちは自身の表現したいシャンパンを生み出すためにさまざまなアイディアを実践しているのです。
特にシャンパン作りにおいては様々な場面で巧みな「ブレンド」が行われることによって品質の安定化と味わいの複雑さが得られているのが特徴です。
シャンパンの味
こうしてさまざまな行程と試行錯誤によって産み出されるシャンパンは他のスパークリングワインと比べても緻密に計算された職人的なお酒であるといえます。
そのため味わいは複雑でいて繊細、飲めば飲むほどその魅力を感じられるといえるでしょう。
このような奥深さこそがシャンパンが世界中で特別視される要因だといえるのです。
スパークリングワインとしてシャンパンを気軽に楽しんで欲しい理由
お酒好きな方でも敬遠しがちなシャンパン。
その理由は大きくわけて2つ。
値段の高さと保存のむずかしさにあると思います。
しかし、本当にこれらはシャンパンのデメリットになりうるのか、個人的な見解を少し述べてみたいと思います。
シャンパンは高いはウソ?
シャンパンは安くても一本で4000円くらいはします。確かにテーブルワインとしてガブガブ飲むにはお高いワインのように感じますよね。
しかしシャンパンは徹底した品質管理が行われているお酒で、時には瓶に詰めたワインを飲み頃になるまで何年も待って市場に流通させています。
そのクオリティは他のスパークリングワインを簡単に寄せ付ける物ではありません。
最近ではスペインのカヴァやイタリアのスプマンテにも注目が集まり、非常にクオリティの高いものも日本に入ってきていますが、それでも良質なシャンパンと同レベルのものを探そうとすれば、価格帯はシャンパンと同じくらいになってしまうように思います。
結局のところ値段と品質は比例していて、安いものにはそれなりの理由があるものなのです。
逆にいえば品質的に考えてシャンパンが高いとは言えないということです。
中にはブランドバリューで値段があがっているものもありますので一概にはいえませんが・・・。
シャンパンは栓を開けても意外と持つ
一般的にシャンパンというと「泡を楽しむモノ」という印象が強いと思いますが、けっして泡だけがすべてではありません。
そしてシャンパンは意外なことに条件さえ整っていれば栓を開けてから2~3日は楽しむことができます。
そもそもシャンパンの泡は瓶内で二次発酵させることによって生まれてくるのですが、この二次発酵によって発泡性のほかにも深みのある味わいを獲得しています。
事実シャンパンは普通の白ワインでは出し得ない香味を持っていることが多く、この複雑な味わいがシャンパンの魅力のひとつになっています。
この複雑さは多少泡が抜けたくらいでなくなるものではなく、むしろ少し泡が落ち着いてからの方が感じやすいものもあるくらいです。
泡が抜け切ってしまったものは論外ですが、ちゃんと専用の栓を使えば中身の減り具合にもよりますが2~3日くらいは泡は持つので、一日2杯ずつ飲んでいけば三日目も十分美味しく楽しめるといえるでしょう。
個人的にオススメなファンビーノのシャンパンストッパー。これで数日はシャンパンを楽しめる。
スパークリングワインにはない ロマンチックなシャンパンの魅力
シャンパンはとにかくロマンチックなお酒です。
生産地であるシャンパーニュ地方ではグラスに注いだときの数多の泡を星に例えて「星を飲む」と表現する人もいるのだとか。
ハリウッド映画の往年の名作「カサブランカ」でハンフリー・ボガード扮する主人公がヒロインに「Here's looking at you, kid(君の瞳に完敗)」と言った時に飲んでいたのもシャンパンです。
ちなみに、この時飲まれていたのは「マム コルドン・ルージュ」と呼ばれるシャンパン。
F1の表彰式でも使われる非常に有名なシャンパンブランド。
優雅に立ち上る泡が魅力的なシャンパンは世界的にみても特別な時に飲まれるお酒の代表でもあります。
実際に結婚式の乾杯やお祝い事の時にシャンパンを飲んだことのある人も多いのでは?
このようにシャンパンというお酒は長い年月をかけて文化的に特別な地位を築いてきた唯一無二のお酒です。
お酒として品格と実力を携えているからこそ、ハレの日に楽しむお酒の地位を確立しているワケなんですね。
シャンパンとスパークリングワインの違いのまとめ
シャンパンとスパークリングワインの違い、シャンパンの魅力についての理解は深まったでしょうか?
シャンパンというと高嶺の花という印象を持っている人も少なくないと思いますが、その楽しみ方を知ればすごく美味しくて楽しいお酒なんですね。
勘違いしないでほしいのはシャンパン以外のスパークリングワインもちゃんとしたものを選べばかなり美味しい優れたワインだと言うこと。
最終的にはTPOにあわせて多種多様なお酒を飲み分けるのが粋な酒飲みだと思います。
しかしシャンパンはただ祝い酒に適しているお酒というだけでなくそれ単体でじっくり味わうのにも適した優れたお酒だからこそ特別なスパークリングワインなんだということも知っておいてほしいですね。
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*1:スペインのカヴァやイタリア・スプマンテの一部のものなど例外もある