チョコレートの原料はカカオの樹に成る果実、カカオ豆です。
このカカオ豆を加工したものが私たちがいつも食べているようなチョコレートになっているのですが、ひとくちにカカオ豆といってもその特徴はさまざまです。
最近では産地別、品種別のカカオ豆の特徴に着目したり、カカオ豆の生産・加工工程に目を向けてチョコレートを作るメーカーも増えてきました。
特に日本では2014年ころを境にBean to Barの動きがムーブメントとなり、こだわりのメーカーではカカオの特徴を使い分けてチョコレートを作るのが一般的になっています。
ビーントゥーバー(Bean to Bar)
製造者自らがカカオ豆(ビーン)を独自のルートで仕入れてバー(多くの場合主力商品はカカオの個性が出やすい板チョコ)に加工して作られるチョコレートやブランド。
そこで本記事ではチョコレートの原料たるカカオ豆に注目。
一般的に言われているカカオの産地別の特徴や生産量、品種や味の違いを学びながらチョコレートの魅力を再確認していこうと思います。
一歩ふみこんでチョコレートを楽しみたいという方はぜひチェックしてみてください。
- カカオ豆はどのような場所で作られる?
- カカオ豆の生産量ランキング
- カカオ豆の品種
- カカオ豆の産地別の特徴
- 産地・品種別のカカオ豆の特徴を楽しめるおすすめチョコレートブランド
- カカオ豆の産地、特徴、ランキングのまとめ
カカオ豆はどのような場所で作られる?
カカオ豆の採れるカカオの樹はアオギリ科の樹木で学名はテオブロマ・カカオといいます。
カカオ豆はカカオの樹に咲く花の種子で、咲いた花が実を結ぶ確率は50~100個にひとつ程度と言われていて、安定して生育するにはノウハウや栽培体制をしっかりと整える必要があります。
こうした高難度の栽培に対して、カカオの樹自体が育つ環境も非常に限られています。
カカオの樹が生育する条件
・平均気温が20度以上
・高温多湿
・風避けや日差し避けになる樹木が周りに存在する
このような条件を満たす場所は地球上でおよそ北緯20度から南緯20度圏内に限られており、この地域一帯をカカオベルトと称しています。
具体的にはアフリカ、東南アジア、中南米などで、コーヒー豆の産地とも共通しています。
コーヒーの産地は同じ地域圏でも標高が高くて冷涼な場所が適しているケースが多く、厳密な栽培場所に関しては違いがあります。
またカカオは年中実が成っている植物ですが、収穫量には季節によってバラつきがあってピークが年2回存在し、専門用語でメインクロップ、ミッドクロップと呼ばれており国によっても微妙に差があります。
そのため年間通して全体の輸入量は安定しているものの、産地についてはシーズンによってバラつきがあるんですね。
カカオ豆の生産量ランキング
カカオ豆の具体的な産地国はどのような国が挙げられるのか、生産量ベースで確認してみましょう。
ここでは日本チョコレート。ココア協会のホームページを参考に紹介します(同ページは国際カカオ機関のカカオ統計を参照している)。
意外にも圧倒的に生産量が多いのはコートジボワールで、日本人に馴染み深いガーナが第2位、インドネシアが第3位となっています。
いっぽうで日本へのカカオ豆輸入量でみるとガーナが圧倒的に多く、次いでエクアドル、ベネズエラと聞き覚えのある産地が続きます。
世界で最もカカオを生産しているコートジボワールのカカオ豆はその生産量に対して日本にはそこまでたくさんは入ってきていません。
コートジボワール産のカカオ豆が日本にあまり入ってこないのは管理体制が影響しているといわれています。
コートジボワールはカカオの生産や流通を民営で管理しており、その分品質にもバラつきがあり、流通のルートも複雑化しています。
いっぽうのガーナはカカオ豆の生産や流通を国を挙げて行っており、品質が安定しているだけでなく日本へ輸入するのも比較的簡単に行えます。
こうした事情から特に大手メーカーのチョコレートはその大半がガーナ産カカオ豆をベースにしていると言われているのです。
Bean to Barの需要が高まっている昨今においても大手メーカーのチョコレートは依然として大量消費されています。
カカオ豆自体の品質も優れているわけですし、ガーナ産のカカオ豆は今後もたくさん日本に入ってくると考えられますね。
カカオ豆の品種
カオ豆には多種多様な品種が存在しますが、大きく分けて栽培されている品種系統は三つ。
クリオロ種、フォラステロ種、トリニタリオ種があります。
クリオロ種
独特の芳醇な香りから近年特に高級チョコレートに使用される。
ポリフェノールの量が少なく渋味や苦味は少ないが、害虫にも弱いので栽培難易度が高い。
フォラステロ種
栽培が容易で世界全体のカカオ豆の9割ほどがこの品種。
ポリフェノールが多くて苦味の強い品種だが、味が強い分ブレンドにおけるベースとして使いやすい。
トリニタリオ種
クリオロとフォラステラを配合して作られた汎用性の高いハイブリット品種。
栽培は比較的容易だが豊かなフレーバーを持っている。
クリオロ種はベネズエラ、メキシコなど限られた地域のみでの生産、トリニタリオ種は中南米を中心に、フォラステラ種はアフリカや東南アジアに多く見られます。
カカオ豆の産地別の特徴
カカオ豆の産地は地球上である程度決まった範囲内におさまっていますが、不思議なことに国ごとにカカオ豆の持つ味わいや風味には違いがあります。
ワインがブドウの産地や畑によって味が異なるように、カカオ豆もまた産地や管理の仕方によって異なる特徴を持つというわけです。
厳密にはカカオ豆からの加工の仕方や現地の取り扱い業者によっても違いはあるので産地だけでこういう味がするとはいえませんが、ここでは一般論としての産地別のカカオ豆の味わいの違いをまとめていきますので参考にしてみてください。
コートジボワール
メイン品種 フォラステロ種
味・香り マイルドで濃厚な味わい、ナッティでバランスのとれた風味
主にヨーロッパで好んで使用されているコートジボワールのカカオ。
生産量は多いですが品質が安定していないということもあり、日本ではガーナ産が好んで使用されていますが、それでも全体をみれば比較的たくさん使用されています。
クセがなくバランスがとれており、比較的ドッシリとした味わいが特徴で単体というよりは複数産地のカカオをブレンドする時に向いています。
ガーナ
メイン品種 フォラステロ種
味・香り 味わい・香り共にバランスがよく突出したものはないが食べやすい
バランスがとれた味わいはコートジボワール同様ですが、ガーナ産は味わいや風味が濃くもなく軽くもなくでカカオのスタンダートとも呼ばれています。
ブレンドする際にも非常に使い勝手がよく、また単体で仕上げてもまとまりのある味のチョコレートを作れる万能型。
日本人にとっては最も親しみのあるカカオでもあります。
ベネズエラ
メイン品種 クリオロ種
味・香り 繊細で洗練された高級感のある味わいと風味
いまは希少となったクリオロ種を作っているベネズエラのカカオ豆は繊細で洗練された味わいが特徴。
バランスがとれた印象でどこか気品のある味わいが多くのチョコレートファン、そして作り手にも愛されています。
品種も多様性に富んでおり、フルーツ感の強いものからナッティなものまでさまざまな味わいのカカオを高品質な状態で入手することができるようです。
流通量が少ないのが難点で、ベネズエラ産カカオを使用したチョコレートは見かけたらぜひ一度は食べてみたいですね。
エクアドル
メイン品種 フォラステロ(アリバ)種
味・香り 香り高く華やかな香味
エクアドルのカカオは高品質なものが多く、カカオ産地としても注目度の高い国です。
特にフォラステロ種のアリバというカカオはエクアドル固有の品種で、ジャスミンティーのような高貴で華やかな香りを有する特徴的なカカオです。
全体的にエクアドルカカオはフレーバーが強く、アクセントとしてブレンドされることも多いですが、シングルオリジンとしてエクアドルカカオのみを用いてチョコートにすることもあります。
マダガスカル
メイン品種 トリタニオ種
味・香り 華やかで酸味のある果実的な味わい
マダガスカルは決してカカオの生産量が多い国ではありませんが、品質は確かで個性のあるカカオ豆を産み出すことで人気が高い国です。
その特徴はフルーツのような爽やかな酸味と華やかなフレーバーで、シングルオリジンでも特徴を捉えやすい産地のひとつでしょう。
マダガスカルに本拠を構えるチョコレートメーカーのロベール社はマダガスカルカカオにこだわった商品を展開しており、クーベルチュールなどの製菓用製品はプロにも人気のアイテムです。
コロンビア
メイン品種 クリオロ種
味・香り ベリーのような甘酸っぱさと香ばしい風味
コロンビアのカカオはとても複雑でリッチな味わいが特徴とされており、マニアックで嗜好性の高いチョコレート製品に適していると言われています。
同じコロンビアのなかでも地域によって味が微妙に異なるのも魅力で、パティシエさんや製菓系の企業にも注目されている産地でもあります。
日本ではコロンビア産カカオにこだわったパイオニアのメーカーとして「ca ca o」が有名です。
トリニダードトバコ
メイン品種 トリニタリオ種
味・香り バランスがとれた味わい
トリニタリオ種の起源となった国で、災害によって全滅しかけたクリオロ種と新しく持ち込まれていたフォラステロ種をかけあわせてトリニタリオ種が誕生しました。
味わいはトリニタリオ種の王道的な安定感、バランスのとれたものですが生産量が比較的少ないためプレミアム価格がつきやすいカカオ産地でもあります。
ドミニカ共和国
メイン品種 トリニリオ種
味・香り 濃厚なフルーツ感で鮮烈な味わい
トリニタリオ種でありながらクリオロの性質が強い傾向があるといわれるドミニカ共和国のカカオ。
トロピカルフルーツやドライフルーツのような鮮烈なフルーツ香が特徴で熱狂的なファンも少なくありません。
より安定・向上した生産体制を積極的に整えている国でもあり、世界的にも注目度の高いカカオ生産地です。
ベトナム
メイン品種 トリニタリオ種
味・香り 優しくサッパリとしておりナッティで酸味がある
ベトナムにチョコレートのイメージを持つ人は少ないかもしれませんが、じつは最近では国を挙げた事業としてカカオ生産に取り組んでいます。
味わいは中南米やアフリカのものと比べるとアッサリとしていてくどさがなく、ナッツ感や爽やかなフルーツ感が魅力。
Bean to Barのブランドなどではシングルオリジンで作られるケースも多くなってきているように思います。
ハイチ
メイン品種 クリオロ種
味・香り ライトでシンプルなカカオ風味が楽しめる
ハイチはもともとカカオ産地としてさほど優れた土地としては見られていませんでした。
しかし国としての輸出物としては大きな割合を占めており、近年では他国のパートナー企業がアドバイスをしながら品質を向上させているケースも少なくありません。
現状は低品質で価格は安いもののポテンシャルはあった国なので、最近のBean to Barブームに乗じて小さなメーカーが一から理想のカカオを作るのには適した土地なのでしょう。
味わいは比較的ライトでカカオ本来のシンプルな味わいを引き出しやすい傾向があり、加工の仕方でいろいろな表情を見せてくれる可能性を持つ産地です。
ペルー
メイン品種 多様な品種が混在
味・香り 爽やかでフルーティー、フローラル
ペルーはさまざまなカカオ品種が育っている国で近年ではチョコレート市場に目をつけた企業がペルーでブランド化する現地製造ブランドも増えています。
全体的にフルーティーでフローラルな味わいで食べやすくフレーバーを拾いやすいのも魅力。
日本への輸入量も年々増加しており、2018年には6位になっています。
インドネシア
メイン品種 トリニタリオ、クリオロ、フォラステラ種
味・香り ライトでシンプルなカカオ風味が楽しめる
東南アジアのカカオは全体的に酸味が強いのが特徴ですが、インドネシアのカカオもその例に漏れず酸味の強さと適度な渋味があります。
味わいは比較的ライトなのでより酸味や渋味が強く感じやすく、砂糖や副材料を上手に使うことで個性的な味わいを表現しやすいカカオでもあります。
また湿気の高いインドネシアでは木炭による乾燥工程を強めに行うケースが多いため、スモーキーなフレーバーがつきやすいのも特徴といえるでしょう。
産地・品種別のカカオ豆の特徴を楽しめるおすすめチョコレートブランド
ドモーリ
ドモーリはイタリア・トリノのチョコレートブランドで、近年のチョコレートのムーブメントに非常に大きな影響力を及ぼしたメーカーでもあります。
創業者のジャンルーカ・フランゾーニ氏が厳しい眼で選んだカカオ豆を使用しているのが特徴で、特に希少品種であるクリオロ種に再び光を当てた功績は大きいでしょう。
今でこそドモーリに勝るとも劣らないメーカーは世界中にたくさん存在しますが、品質の高いカカオを使ってチョコレートを作る潮流を作って成功したメーカーとしていまなお多くのファンから愛されています。
比較的手に入りやすいのも魅力で、気軽にネットショッピングで購入することもできるのも魅力。
カカオの違いを楽しみたい方はまずドモーリの産地別、品種別のチョコレートを試してみるといいのではないでしょうか?
ドモーリのシングルオリジン(単一産地)のチョコレートシリーズは生産国はもちろん品種にも注目している点が特徴。
テイスティングセットで複数の産地の味わいを比べてみるのも楽しい。
ショコル
世田谷区深沢にひっそりと佇むショコラトリー・ショコル。
日本のBean to Barのパイオニア的なお店のひとつでもあり、看板商品の「幸せの青い鳥」はハイカカオのコイン型チョコレートで産地別の味わいを楽しめます。
この他にもカカオ産地の特徴を活かしたチョコレート菓子は多数展開しているので、カカオに興味のある方はぜひ一度試してもらいたいですね。
ミニマル
日本のBean to Bar人気の火付け役ともいえるブランド・ミニマル。
厳選した各国のカカオ豆を焙煎や挽き具合を微調整しながら加工することで、そのカカオ豆の持つ個性が最大限にまで引き出されています。
基本はカカオ豆と少量の砂糖のみで作られているので、食べ比べすることでカカオ豆の違いでここまで味が変わるのかという驚きが分かりやすく体験可能。
はじめてのBean to Barブランドとしてもとてもオススメできるメーカーですね。
パティスリーモラン
個人的に筆者が感動したフランスのBean to Bar系ブランド。
酸味の出し方が絶妙で、このブランドのチョコレートは本当に果実を感じるような爽やかで芳醇な味わいが楽しめます。
カカオ豆の表現でよく使われる「フルーツのような」という表現がいまいちピンとこなかったときに食べて「これは確かにフルーツだ!」と感動したのを覚えています。
また本来おいしく作るのが難しいといわれているカカオ100%の製品を食べたときも「カカオは発酵食品」ということを理解させてくれる素晴らしい完成度に驚きました。
手に入りづらいこともあり少し上級者向けではありますが、機会があれば一度食べてもらいたいブランドです。
明治ザ・チョコレート
明治が販売しているチョコレートシリーズ「明治ザ・チョコレート」はカカオ産地に注目したBean to Bar系の商品。
価格帯はお手頃ながら使用するカカオ豆はシングルオリジンのものも多く、カカオ豆の持つ個性を気軽に体験するにはとても優れた商品です。
カカオ分が低めなもの(ジャスミンティーやゆずなどの副材料を使用したものやミルクチョコレート)も多いので一概に国別のカカオフレーバーを比較するのには適していませんが、とっつきやすさと価格面でとても優れています。
食べ比べセットなども販売されているのでまだ試していない方は試してみるのもおすすめです。
カカオ豆の産地、特徴、ランキングのまとめ
本記事ではチョコレートの原料であるカカオ豆の産地、品種などについて解説してきました。
カカオ豆は非常に奥の深い食材で、加工の方法などによっても大きく味わいが異なりますが、加工前の産地や品種によってもそれぞれ特徴が違います。
もちろん最終的に出来上がるまでにはいろいろな要素が絡んでくるので一概には決めつけられませんが、こうしたカカオ豆自体の特徴を知ってからチョコレートを食べるとより一層楽しめるのではないでしょうか?
最後に、今回の記事は筆者のいままで持っていた知識を改めてまとめると同時に、改めて情報をより正確なものにするために各企業・団体のWEBページや書籍を確認しました。
なかでも細かな資料的な部分では「日本チョコレート・ココア協会」様のサイトと「チョコレートの手引き」(蕪木祐介著)を参考にさせて頂いた部分が多かったことをここにご紹介しておきます。
特に「チョコレートの手引き」では本記事の内容はもちろん、これ一冊でチョコレートの基礎から少し踏み込んだところまでを簡潔に理解できる素晴らしい著書でした。
機会があればご一読頂くと良いのではないかと思います。
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