バルサミコ酢というとなんとなくコジャレたレストランで使う調味料くらいに考えている人も多いかもしれません。
しかしバルサミコ酢は個人的に調理酢のなかでもっとも汎用性が高く、簡単に料理の味わいに奥行きを与えられるものだと考えています。
そこで本記事ではバルサミコ酢とはどんな酢なのかを紹介しながら、その便利さと魅力を徹底解説していきます!
バルサミコ酢とは?
原料はブドウ!イタリアの果実酢の一種
バルサミコ酢は果実酢(フルーツビネガー)のひとつ。
原料はブドウで、葡萄果汁を濃縮して作られる非常に濃厚な酢です。
具体的にはイタリアのエミリア・ロマーニャにあるモデナを中心に作られる伝統的なビネガー。
トレビアーノ種を中心としたブドウから果汁を絞りおおよそ半分に煮詰めて酢にする贅沢な製法をとっています。
バルサミコ酢のポイントは樽熟成
バルサミコ酢はワインビネガーの一種として数えられることが多い酢です。
しかし酢酸菌を添加して工業的に作られることも多い赤/白ワインビネガーに対し、バルサミコ酢は濃縮果汁を自然発酵させるという手間のかかる行程で作られます。
さらにこの自然発酵を行う際に長期間の樽熟成を行うというのがバルサミコ酢最大の特徴です。
まるでウイスキーやブランデーを作るかのように、長ければ10年以上の歳月を樽で寝かせます。
これによってまろやかさと複雑さを兼ね備えたバルサミコ酢が誕生します。
熟成中にナラ、栗、桜、トネリコ、クワといった順に少しずつ小さな樽へ移しかえていくことでより深い熟成と水分の蒸発をコントロールしていますが、それでも最終的に出来上がる酢は時にははじめに樽に注いだ量の数%程度になっていることもあるそうです。
バルサミコ酢の主な使い道
サラダ、カルパッチョなどにドレッシングとしてかけたり、肉や魚料理のソースを作る際にベースで使うのが基本的な使い道です。
熟成の長い少しトロみのあるようなタイプのバルサミコ酢は酸味が少なく甘さと芳醇な風味があるためアイスクリームやチーズなどにそのままかけて使われることも多いですね。
日本ではあまり馴染みがありませんがイチゴやイチジクなどの生フルーツとも相性がよく、ふりかけて食べることでフルーツの風味と甘さが際立ちます。
またバルサミコ酢は非常に味の主張がしっかりとした酢なので、通常のワインビネガーないしは穀物酢をベースに使う料理に少量だけ足して風味をプラスして使うのもオススメです。
バルサミコ酢の代用方法は?
バルサミコ酢は紹介してきたように非常に特殊な製法で作られている酢です。
そのためバルサミコ酢そのものを他の調味料で置き換えるのはとても難しいでしょう。
しかし、そもそもバルサミコ酢がないと成立しないという料理は少ないので風味は少し劣るものの赤ワインビネガー、シェリービネガーが代用に向いています。
バルサミコ酢の味わいを分解すると酢としての酸味に甘みとコクが加わっているイメージです。
バルサミコ酢の風味は代替しがたいものですが、とはいえあくまでも酢という調味料の一種なので基本的には他の酢で代用ができなくはありません。
また普通の穀物酢にウスターソースを少量加えたり、砂糖を焦がしてカラメルを作って混ぜるとコクをプラスできるため近い方向性の味わいに仕上がります。
バルサミコ酢の選び方
バルサミコ酢と名の付く商品は市場にたくさん出回っていますが、質も価格もピンキリでどれを選べばいいのかわからない・・・。
そんな方のためにはずさないバルサミコ酢の選び方を解説しましょう。
D.O.PないしはI.G.P認定の正式なバルサミコ酢を選ぶ
イタリアやフランスでは自国の伝統的な食材を原産地管理呼称法という法律で統制しています。
バルサミコ酢は原産地であるイタリアのD.O.Pという決まりのもとで管理されていて、モデナとレッジョ・エミリアという地区で作られたもののみがバルサミコ酢を名乗ることが許されます。
産地以外にも製法において細かい規定はあるものの、いずれにせよD.O.Pによって認定されたアイテムを購入すれば基本的に間違いはないといえるでしょう。
しかしその反面でD.O.Pの認定を受けるバルサミコ酢は途方もない手間がかかるため価格が高く嗜好性の高い調味料です。
そこで新たに2009年よりI.G.P(Indicazione Geografica Protetta)というイタリアのみならずヨーロッパ全体の原産地管理呼称を獲得し一般消費用のお手頃なバルサミコ酢の製造を促進することに成功しました。
つまり現在"公式"のバルサミコ酢はD.O.P認定のものとI.G.P認定の2種類が存在しているワケです。
おいしいもののためならお金に糸目をつけない人はD.O.P、日常的に気軽に使いたい人はI.G.P認定のものを選ぶようにするとよいでしょう。
トラディツィオナーレかアチェートか
バルサミコ酢にはおおきくわけてトラディツィオナーレとアチェートという2つのランクが存在します。
トラディツィオナーレは"伝統的な"という意味合いで12年を越える熟成に加え原料の選定や製法についても細かい規定があります。
そのぶん価格も高く、基本的には高級レストランなどでないと使わないバルサミコ酢ですが、バルサミコ好きなら一本常備しておいても損はないでしょう。
アチェート・バルサミコは普段使いに適したタイプの本格派バルサミコ酢。
トラディツィオナーレよりも製法の決まりはゆるく、各メーカーでさまざま工夫をして個性を出しつつも味わいを高めています。
アチェート・バルサミコのなかにも8年、10年など寝かせているものは熟成年数を明示した製品も少なくありません。
熟成の進んだバルサミコ酢は酸味がまろやかで甘みが増し粘度も高い傾向にあります。
アチェートも値段はさまざまですが、バルサミコ酢の美味しさを知ったうえで一本常備するならまずはアチェートの中ランク程度(700mlで1500~2000円程度)のものを買ってみることをオススメします。
量販店に売っている名もない安価なバルサミコ(風なものも含む)と比べると、このクラスのバルサミコは風味もしっかりと楽しめるはずです。
添加物の有無で選ぶ
バルサミコ酢はブドウ果汁をベースに、品質を安定させるためにワインビネガー、酸化防止剤(亜硫酸塩)、カラメル色素を添加しているものも多いです。
酸化防止剤は酵母の動きを制限しつつ殺菌効果もある非常に便利なもので、バルサミコを安定して大量に作るには欠かすことのできないものですが無添加にこだわる造り手も少なからず存在します。
カラメル色素は樽熟成の短いバルサミコ酢に濃い色合いをもたらすためで、これは味だけの面であれば正直あまり必要のない添加物です。
添加物の良し悪しはそれだけで製品の品質に関わるものではありません。加えて無添加のものは製造が難しいがゆえに高値になりがちです。
しかし口に入れるものですから気になる方はラベルの原材料表示をみて添加物の有無は確認してから購入してもいいかもしれませんね。
おすすめバルサミコ酢2本厳選紹介
ジュセッペ・ジュスティ銀ラベル
普段使い用に一本バルサミコを購入したい・・・でもどうせ買うなら高品質なものがいい!という方にうってつけのバルサミコ酢です。
「ジュセッペ・ジュスティ」はイタリア食材に精通している人なら誰もが知る有名なバルサミコブランド。1605年に創業してから伝統的なバルサミコ造りに情熱を傾け、今では最古の伝統的なメーカーといわれています。
一切の添加物を加えずに丁寧に絞ったブドウ果汁からのみ作り出されるバルサミコ酢はピュアな味わいでこれぞバルサミコ酢といわんばかり。
ラベルの色でグレードが決まっていて(銀、黒、茶、赤の順でハイグレード)赤ラベルはD.O.P認定の12年熟成で250ml7000円と高級酒よりさらに高いですが、一番安価な銀ラベルはI.G.P認定の6年熟成で1000円半ばくらいから購入可能。
汎用性も高く、サラダやカルパッチョでそのまま食べてもソースや煮込みに使っても美味しいバルサミコ酢で筆者も常備しています。
正直料理によって使い分けたいプロレベルの方でない限りこれ1本あればまず間違いないでしょう。
ヴィラグリメッリ バルサミコビネガー プラチナ
とろっと濃厚なバルサミコを試したいけど熟成年数の長いバルサミコ酢は高すぎるし・・・という方におすすめなのがコチラ。
グレープマスト(ぶどう果汁を加熱して煮詰めたもの)65%以上使用のバルサミコ酢で特徴は非常にねっとり濃厚な液感。
じっさいに舐めてみると酸味は軽く非常に甘さが濃いのがわかります。
筆者はこのヴィラグリメッリのバルサミコ酢をデザートやフルーツなどにかけるのに使用しています。
量も100mlとちょうどよく使い勝手がとてもいいので、料理用にメインで使うのとは別にもうひとつヴィラグリメッリのバルサミコ酢を持っておくとバルサミコラバーにとっては便利なのです。
バルサミコ酢の保存と賞味期限
バルサミコ酢は酢なので保存の利く調味料ですが、一方で繊細な風味を持った調味料でもあるため開封後は品質の低下に気を付ける必要があります。
高温多湿を嫌うので基本は冷蔵庫での保存がオススメで、使った後に雑菌が繁殖しないように注ぎ口は清潔な布巾でふき取るようにするとよいでしょう。
酸度が高いので腐ることはあまりありませんが、開封後は風味の変化などを見ながら1~2年の間には使い切ることをオススメします。
バルサミコ酢とは?のまとめ
本記事では使いこなせるととっても便利なバルサミコ酢について徹底解説してきました。
バルサミコ酢は伝統ある調味料であると同時に世界中の人に使ってもらうために進化を続けていて、日本でも気軽に楽しむことができるようになりました。
一度その魅力を知ると常に手元にないと不安になること間違いなし!
ぜひこの機会にバルサミコ酢を味わってみてくださいね。
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