スコットランドにある100を越える蒸留所(ウイスキーを作る場所)のなかでも常に話題に事欠かず、長い歴史のなかで伝説的として語られ続けたウイスキーといえばまずマッカランが話題にあがります。
特に日本ではスコットランドのシングルモルトウイスキーのなかでも飛びぬけて人気があり、輸入数も最も多いと言われています。
貴重なボトルは世界各国のオークションで驚くべき値段で取引されることもあり、日本のみならず世界中から愛され注目されています。
本記事では昔から今まで最も勢いのあるウイスキー「マッカラン」の種類、味、値段についてまとめながら、その魅力を紐解いてみましょう。
- モルトウイスキーのロールスロイス「マッカラン」
- マッカランの歴史と味へのこだわり
- マッカランを味わってみよう
- マッカランの種類と値段
- 恐れおののく値段⁉ヴィンテージマッカランの価値とその理由
- マッカランの種類、味、値段は?のまとめ
モルトウイスキーのロールスロイス「マッカラン」
マッカランはスコットランドのスペイサイド地方で造られているシングルモルト・ウイスキー*1。創業は1824年、2024年にはバイセンテナリー(200周年)をむかえるということで、2018年には新しい蒸留所を建設するなどして話題にもなりました。
長い歴史のなかでマッカランはスコッチングルモルトウイスキーとして飛びぬけて高い品質を持っている造り手としてウイスキーラバーから最も敬意を表されています。
ロンドンの伝統ある百貨店「ハロッズ」はマッカランを「モルトのロールスロイス」にたとえ、当時熱狂的なファンが多く愛されていた名車のごとく個性的でありながら完成されたウイスキーであると評しました。
このロールスロイスにたとえた表現はいまなおマッカランを表す代名詞として残っています。
マッカランの歴史と味へのこだわり
マッカランはどうして世界中で愛されているのか、その秘密は歴史と製法にありました。
マッカランの歴史
1824年創業のマッカラン。当時スコットランドではウイスキーの販売にとてつもない税金が必要でした。そのためウイスキー造りは非公認の密造酒だらけに。
そんななか1823年に税金の引き下げが決定され、各蒸留所が政府からの公認を受ける流れができはじめます。真っ先に政府公認になったのはグレンリベットという蒸留所でしたが、これに次いで公認となったのがマッカランです。
以後確かな品質で多くのファンを獲得してきたマッカランの地位はゆるぎないものとなっていきます。
マッカランの味へのこだわり
マッカランの味へのこだわりはウイスキーを語るうえでいろいろな場面で引き合いに出されます。
モルトウイスキーの原料となる大麦麦芽は品種管理から仕上がりまでを管理、マッカランにふさわしいものを指定農園に作ってもらっています。じっさいに蒸留に使うポットスチルも多種多様に取りそろえることで味のバリエーションを生み出します。
さらに最大の特徴は樽へのこだわり。熟成に使う樽はウイスキーの味を決定する最重要項目ですが、マッカランはこの樽にはより強いこだわりをもっています。
特にオロロソシェリー樽は長年マッカランの味を決めるファクターとして時代ごとに最善の一手を考え抜いており、今現在では自社で持っている森林からベースとなる木材を伐採、樽へ組み立ててからスペインへ移送し、提携会社にシェリー酒を注ぎいれてもらってシェリー樽をオリジナルで仕込んでいます。
シェリー樽(スペインで作られるワインの一種を寝かせた空樽)とウイスキーの関係は非常に根深い問題です。
もともとシェリー樽はスペインでもう寿命を迎えたシェリー用の樽を買い取ってスコッチの熟成に転用していたという歴史があります。
しかしシェリーの供給に対してスコッチの供給は多く、現代では良質なシェリーの空樽はそう簡単には手に入らなくなりました。
そのためシェリー樽そのものをウイスキー熟成のために意図的に作るシステムもできており(シーズニング)、マッカランはその流れを作った先駆けのブランドだといえるでしょう。
マッカランを味わってみよう
それではマッカランのスタンダードである12年のボトルを味わってみましょう。
マッカラン12年は先ほど説明したマッカランのオロロソシェリー樽へのこだわりを堪能するのにちょうどいいボトルです。
赤く耀く液体はまさしくシェリー樽の影響を思わせる色合いで、ドライフルーツやナッツを連想させるような香ばしく凝縮された香りがふわりと広がります。
口に含んでみると飴玉のようなかすかな甘さが広がりますがベースは比較的ドライで骨太な酒質。徐々にドライフルーツ、ナッツ、スモーク、スパイスといったニュアンスを感じ取ることができるのではないでしょうか?
まさしくオロロソシェリー樽由来のナッティなニュアンスと果実感がウイスキーと混じり合って生れてくる複雑なハーモニーがここに表現されています。
よくマッカランは飲みやすくて初心者向けという言葉を聞きますが、筆者あまりそうは思いません。マッカランの持つドライでかすかなスモーク感もあり、複雑なフレーバーはむしろ少し飲みなれた人のほうがその真価を理解できるのではないかと思います。(初心者ならフレーバーの拾いやすいグレンリベットのほうが個人的にはオススメです。)
マッカランの種類と値段
値段は並行輸入か正規輸入かでも異なりますし、購入店舗でも差があるので参考程度にご覧ください(ネットで買える店舗でのおおよその平均価格を参考にしています)。
基本のマッカラン
マッカランは数多くのボトルがリリースされているため把握するのが大変ですが、基本的には「スタンダード」「ファインオーク」「ダブルカスク」シリーズをおさえておけば対応できます。
各シリーズで10年から30年程度までの熟成年数のラインナップがあります。
マッカラン12年 値段:6000円前後
基本中の基本シリーズ。オロロソシェリー樽100%のフラグシップモデルです。
バランスのとれた12年熟成でオロロソシェリー由来のナッツ、ドライフルーツ、スパイス感を楽しめます。
マッカランで迷ったらまずはココから攻めるのがいいでしょう。
マッカランダブルカスク12年 値段:6000円前後
2017年にリリースされたばかりのマッカランの新しいシリーズ。
ヨーロピアンオーク使用のシェリー樽、アメリカンオーク使用のシェリー樽という二つのタイプのシェリー樽をブレンドして作られるシリーズです。
従来のマッカランにあった複雑なフレーバーにバニラのような甘い香りが強調されて、より高次元の味わいを表現しています。
個人的にはスタンダードの12年よりメローでひっかかりがなく飲みやすいという印象です。
マッカランファインオーク10年 値段:4000円前後
最低10年熟成させた3つの異なる樽原酒を使用。原酒はそれぞれヨーロピアンオーク使用のシェリー樽、アメリカンオーク使用のシェリー樽、バーボン樽。
シェリー樽100%に強いこだわりのあったマッカランが近年新しく展開したシリーズで、もっと気軽に飲めるマッカランを意識して作られています。そのためソーダ割りや水割りでも飲める、ある意味日本人向けともいえるような味わいにもなっています。
価格も少し安く、他のシリーズと違って10年モノから展開されているのもファインオークならでは。スムースで華やか、ひっかりりがなく飲みやすいマッカランの新しいカタチです。
マッカラン1824シリーズ
マッカランは定期的に限定シリーズを発売してマニア心をくすぐることで有名ですが、1824シリーズは従来の熟成年数をウリにするプレゼンテーションに対するアンチテーゼとしても話題になったシリーズです。
原酒の色あいによって名前が付いており、ウイスキーの本質をより理解して欲しいという願いが込められているように感じます。(限定販売なので在庫のないものも出てきています。)
セレクトオーク 値段:5000円前後
マスター・オブ・ウッドと呼ばれる樽の専門家がヨーロピアンオーク使用のシェリー樽、アメリカンオーク使用のシェリー樽、バーボン樽を選定し、そこで熟成させた原酒をブレンドしています。
スペシャル版ファインオークといったところでしょうか?
アンバー 値段:6000円前後
スパニッシュオーク使用のシェリー樽、アメリカンオーク使用のシェリー樽とのバッティグでダブルカスクのスペシャル版のイメージ。
味わいはダブルカスクよりもハッキリとしていて、スパイシーでキリっとした風味が特徴的。分かりやすい立体的な味わいでなかなかの完成度に仕上がった一本かと。
アンバー(琥珀)というネーミングもいいですよね。
シエナ 値段:10000円前後
ファスートフィルのスパニッシュ&アメリカンオークのシェリー樽で寝かせた原酒のブレンド。ファーストフィルははじめてスコッチウイスキーを満たす樽のことで、樽の成分が出やすいのが特徴。
黄褐色(シエナ)の名の通りの美しい液色。しっかりと樽の風味を吸い込んだウイスキーはねっとりとした濃口のニュアンスも少しずつ表れ始めています。
いま10000円前後で買える価格帯中レンジのマッカランは貴重なので早めにチェックしておくべき一本です。
恐れおののく値段⁉ヴィンテージマッカランの価値とその理由
2018年に海外のオークションでマッカランの60年が1億2千万円で取引されたというニュースがありました。
この価格はオークションのウイスキー価格の最高値を更新しましたが、それまでの1位もまたマッカラン(2014年のサザビーズ香港のオークションで落札された4.5リットルサイズのマッカランMと呼ばれる商品)だというのですから驚きです。
このようにマッカラン、特に限定品や古いヴィンテージのものはオークションなどでも驚くほど高い価格で取引されています。
じっさいに日本のヤフーオークションなどでも型落ちした昔のレギュラーボトルが当時の数十倍の価格で取引されたり、ヴィンテージものになると数十万円の値がつくこともザラにあります。
マッカランが特別に人気のある銘柄であるという価格の高騰に影響していますが、特にオールドスタイルで作られているマッカランは他を寄せ付けない圧倒的な味わいを持っており、マニアから高い支持をうけることも要因の一つとなっています。
じっさいに筆者も昔のマッカランを飲む機会に恵まれたことがありますが、その味わいは確かに今のものとは一線を画すものだったと認識しています。
もちろん今は今。どちらがいいというものではないのですが、そうした理由からもう手に入らないマッカランのボトルには高値がつくことがあるんですね。
マッカランの種類、味、値段は?のまとめ
スコッチウイスキーを楽しむうえで避けては通れない銘酒の一つマッカランについて特集してまいりました。
2024年には200周年を迎えるということで特別なリリースにも期待がかかります。これを機会にまだマッカランを飲んだことのない方はぜひ一度その味わいを確かめてみてはいかがでしょうか。
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