ワインというとフランスやイタリアのイメージが強いかもしれませんが、同じヨーロッパのポルトガルも負けていません。
ポルトガルは一般的な赤ワインや白ワインもたくさん作られていますが、酒精強化ワインと呼ばれるちょっと変わった甘いワインをたくさん作っているのも特徴です。
なかでも有名なのがポートワインと呼ばれるワインです。
・ポルトガル・ドウロ地方で造られる酒精強化ワイン
・ワインの発酵途中にブランデーを添加して発酵を停止させて作るワイン
・葡萄由来の糖分が残っている甘いワイン
・ 普通のワインより長持ちする
ポートワインは普通の赤・白ワインとは異なる特徴を持っています。
最も異なるのはその製法で、その結果味わいも全く異なるものに仕上がります。
そこで本記事は甘いワインのなかでも世界的な知名度が非常に高いポートワインに注目し、種類、度数、飲み方、温度について解説していきます。
- ポルトガルの甘いワイン「ポートワイン」の特徴とは
- ポートワインの製法と味わい
- ポートワインの種類
- ポートワインの飲み方
- ポートワインの保存方法と保存期限
- ポルトガルの甘いワイン・ポートワインとは?のまとめ
ポルトガルの甘いワイン「ポートワイン」の特徴とは
国の厳密な管理下で作られるポートワイン
ポートワインはポルトガルで作られるワインの一種です。
ポルトガルのなかでもドウロ地方上流であるアルト・ドウロ地区のみが法定区域としてポートワイン用の葡萄として使用できます。
ここで栽培された葡萄を醸造したあとに船で下流へ下りヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアという場所まで運ばれます。
この場所にはポートワインを貯蔵・熟成するための倉庫(ロッジ)とそれを管理する商社(シッパー)が多数存在していて、ここで寝かされたもののみがポートワインを名乗ることを許されます。
完成したポートワインは近くのポルト港という場所から世界各地へ出荷されていきます。
特にイギリスからの需要が昔から高く、portwineがポルトではなくポートと呼ばれるのも「イギリス人がそのように発音して世界に広がったから」と言われているほどです。
ポルトガルワインと日本の関係
これは余談になりますが、ポルトガル=ワインのイメージは日本人に少ないかもしれませんが、じつは日本に初めてワインを持ち込んだのはポルトガル人だったと考えられています。
当時の輸送技術のことを考えても、もしかしたら日本に持ち込まれていたワインのなかには輸送にも適したポートワインのようなものが混じっていたかもしれません。
また、サントリーが発売する赤玉スイートワインはもともと赤玉ポートワインという名で販売されていましたが、ポルトガル側から「ポートワインという名称を使わないでほしい」という要請があり「赤玉スイートワイン」に改名することになりました。
この赤玉スイートワインはいまや昭和のお酒のイメージが強くなっていますが、最近では森見登美彦著の「夜は短し歩けよ乙女」という作品内で取り上げられたことで話題になりました。
こうやって考えるとポートワインは日本人にとってもゆかりのあるお酒のように思えてきますね。
ポートワインの製法と味わい
ブランデーを添加して作るポートワイン
ポートワインの製法の特徴は、ワインを通常通り発酵(糖分をアルコールへ変換する作業)させる過程において、完全に発酵を済ませる前にブランデー(この場合は葡萄の蒸留酒)を添加することで発酵を停止させることにあります。
ブランデーを添加することによってポートワインには以下のような特徴があります。
- アルコール度数を高めたワインを作ることができる→酒精強化ワイン
- 葡萄の糖分を残した状態のワインを作ることができる→甘口デザートワイン
酒精強化ワインとポートワインの度数
アルコール度数を高めたワインのことを酒精強化ワイン(フォーティファイド・ワイン)と呼びます。
日本では酒税法の定義上「甘味果実酒」として分類されています。
通常、ワインというとアルコール10~13%程度が基本です。この程度のアルコール度数だと劣化が早く、保存がシビアで輸送も難しいという欠点があります。
一方の酒精強化ワインはアルコールも10%後半から20%弱あり糖度も高いためワインの弱点となる酸化に比較的強く、保存も通常のワインよりも難易度が下がります。
もともとは冷蔵や輸送技術の発達していない時代に試行錯誤の末うまれたワインで、数百年の歴史のなかで洗練され独特の風味や味わいを確立してきました。
甘口に仕上がるポートワイン
ポートワインにおいてはこのブランデーの添加をアルコール発酵中に行います。
発酵過程でアルコール濃度を高めると発酵を促す酵母などが高いアルコールに耐えかねて活動を停止するため発酵もそれに伴い停止、糖分の多くがアルコールに変換されていないため甘味を残した(普通のワインより糖分残留量がとても多い)ワインに仕上がります。
ポートワインを飲んだことのない人は「甘口ワイン」と聞いていわゆる日本酒の甘口/辛口くらいの違いを想定している人も多いかもしれません。
しかしポートワインの甘口はあきらかに糖分を持った甘さであり、ケーキやアイス、すなわちデザートのような甘さであることを覚えておきましょう。
ポートワインの種類
ポートワインにはその原料や製法、熟成によって以下のような分類が存在します。
ひとくちにポートといってもその味や価格は種類によってさまざまです。
色によるポートワインの分類
ポートワインはまず色によってルビータイプとホワイトタイプら分けられます。
ルビーポート
その名の通り赤色のポートワイン。ポートワインにおいて最もポピュラーなタイプで年数の違う複数のポートワインをブレンドして作られます。
ブレンド後3年ほど樽で寝かせてから瓶詰・出荷。
色合いと味の品質を保つため熟成中は通常のワイン同様極力酸素と接触させないようにするのが特徴です。
各ブランドのスタンダード商品であることが多く価格帯も比較的安価です。
ホワイトポート
白ぶどうをベースにして作られるポートワイン。
こちらも3年ほどの熟成を経て瓶詰されますが、ルビーポートよりもキリっとした飲み口で甘さが控えめのものも多いです。
ルビーポートとホワイトポートはポートワインというくくりの中でテーブル赤ワインとテーブル白ワインくらいの関係性だと思えばよいでしょう。
熟成方法によるポートワインの分類
トゥニーポート
トゥニーポートはトゥニーカラー(黄褐色)のポートワイン。
一般的にトゥニーと呼ばれるものはルビーポートを樽内で10年以上のスパンで熟成させたものを指します。
10年から40年くらいまでがよく出回っており、樽内で長期熟成する過程で酸化が進み、色合いが褐色味を帯びる。
なかにはホワイトポートとルビーポートを混ぜて作る安価なものもあるので注意が必要です。
ヴィンテージポート
ポートワインの最高級クラスです。
単一年の葡萄のみを使用して作られるためヴィンテージ(年)がボトルに記載されています。また"ヴィンテージポート"という表記があるのも特徴です。
ヴィンテージポートワインは葡萄とワインの出来が良い時のみ"ヴィンテージ宣言"が行われて製品化されます。
宣言はブランドごとに行い、これをポートワインの協会がヴィンテージポートを名乗るにふさわしいかどうか判定するため、ポートワインとして良年であってもブランドによっては宣言を出さないこともあります。
ヴィンテージポートは樽で1~2年という短い熟成を行った後、澱つきのまま瓶詰し、瓶に入れてから長い時間をかけて瓶熟させます。
ヴィンテージにもよりますが飲み頃は20~30年は先になります。。
コルヘイタ
ヴィンテージポートと並んでポートワインの最高級品として位置づけられるポートワイン。
ヴィンテージポート同様に単一年の葡萄のみを使用し、ラベルにもその旨が表示されます。
その後に樽でヴィンテージポートよりも長い7年以上の熟成を経て瓶詰。瓶詰のタイミングは各社に任され、瓶詰年もラベルに表示されるのがヴィンテージポートとの違いです。
澱引きしてボトリングし、瓶詰後すぐに飲んで美味しい仕上がりになっていることが基本です。
レイト・ボトルド・ヴィンテージ
ヴィンテージポートといえるほどの年ではないが、まずまず良好な年に作られるポートワイン。
ヴィンテージポートの廉価版的存在です。
樽内で5年前後熟成されたのちに澱引きして瓶詰。ラベルに収穫年が表示されます。
特徴としてはコルヘイタとヴィンテージポートの中間的存在もいえるでしょう。
ライト・ドライ
ホワイトポートの発酵過程で、通常よりも長く発酵期間をとってからブランデーを添加して作られます。
長く発酵させるということは消費される糖分も多いため、仕上がりはポートワインのなかでは辛口になります。
ポートワインの飲み方
ポートワインは基本的に甘口のワインに分類されます。
なかでも甘口/辛口は存在しますが、製法の特性上ふつうのワインよりも甘みを残しており風味も強いです。
そのためホワイトポートやライトドライタイプであれば食前に飲むというのもありですが、基本的には食後に楽しむのがスタンダートな楽しみ方だといえるでしょう。
チーズやチョコレートなどと相性が良いとされていて、フレンチやイタリアンのフルコース料理のあとの食後酒などに好まれます。
また熟成を経たコルヘイタやヴィンテージポートはそれぞれより複雑な味わいを持っているので、食後に単体で味わうのが理想でしょう。
このレベルになると扱っているお店も少なくボトルで買って飲む機会もないかもしれませんが、長期熟成に耐えうるという意味では生まれ年のワインなどが欲しい場合に探してみるのもアリですね。
安価なルビーポートやホワイトポートはカクテルの材料として使われたり、炭酸などで割って楽しまれることもあります。
ポートワインの保存方法と保存期限
ポートワインの保存と温度
保存場所は冷暗所が基本。ワインセラーがあればセラーが理想です。
特にコルヘイタやヴィンテージポートのような上質なポートワインは冷やし過ぎると味わいが鈍ってしまうので、可能であれば12~13度くらいの温度で保管するとよいでしょう。
真夏でなく日も当たらない場所であれば最悪常温で保存でも大丈夫です。
安価なタイプのものであれば冷蔵庫くらいの温度でキリリと冷やして飲むのも良いでしょう。
ポートワインの保存期限
ポートワインは糖分を残しているため普通のワインのように開けたらすぐに飲む必要はありません。
ものにもよりますが、通常のルビーポートやホワイトポートは冷蔵庫でしっかり栓をして保存すれば長期の保管が可能です。
じゅうぶんに樽で酸化したトゥニーなどは耐久性も高いため1年以上の保存も可能でしょう。
最も繊細なヴィンテージポートも筆者の経験以上、抜栓してから1か月~2か月程度は味の変化を愉しみながら美味しく飲むことが可能です。
いずれにしろ基本的には普通のワインのように酸っぱくて飲めない・・・ということにはあまりなりません。
もちろんあまりにも時間をかけるのはワインに負担をかけますが、一日一杯ずつ少しずつ飲んでいって味の変化を愉しめるのもポートワインの魅力。
自宅でゆっくり飲んでいて明らかな味の変化を感じたら早めに飲み干すか煮込み料理やソース、スイーツに使ってしまいましょう。
ポルトガルの甘いワイン・ポートワインとは?のまとめ
イギリス紳士のたしなみのひとつとまで言われるポートワインについて解説して参りました。
数百年に渡る歴史が紡いできた伝統的なワインは最近では日本でも飲める飲食店が増えてきています。ネットを使ってボトルで購入することも可能ですね。
ポルトガルの文化を語る上では欠かせない存在ですから、ぜひこれを機に頭の片隅にその存在をインプットしてみましょう。
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