みなさんはポートシャーロットというウイスキーをご存じでしょうか?
いわゆるウイスキークラスタの皆さんであれば「そんなの知ってて当然」の銘柄、最近ウイスキーを飲み始めた人やあまりウイスキーに詳しくない人にとっては知らなくても当たり前くらいにはマイナーな銘柄です。
正直筆者は「ポートシャーロットって微妙でしょ?あえては飲まないよね・・・」くらいに思っていたのですが、去年パッケージが一新されたオフィシャル*1を飲んで評価が変わりました。
そこでここでは「いまキテるんじゃない?」と思うスコッチシングルモルトウイスキー・ポートシャーロットについて解説していくことにしました。
- アイラウイスキー「ポートシャーロット」とは?
- 徐々にリリースが増えるポートシャーロットの評価
- 「ポートシャーロット2011 アイラバーレイ」「ポートシャーロット10年」がなかなかの完成度
- アイラウイスキー全体の高騰と枯渇にもポートシャーロット再評価の要因がある
- まとめ
アイラウイスキー「ポートシャーロット」とは?
ポートシャーロットはスコットランドのシングルモルトウイスキーです。
このウイスキーはブルイックラディというアイラ島というスコッチウイスキーの一大産地にある蒸留所で作られています。
ブルイックラディはもともと「ブルイックラディ」という名前でのみウイスキーを販売していましたが、経営不振で1994年に一度閉鎖され、新たな経営陣を迎えて2000年に再始動しました。
なかでもウイスキー業界ではやり手の男として名のとおったジム・マッキュワンが携わったこともあり、新生ブルイックラディは伝統的な製法を大切にしつつも革新的なやり方にもチャレンジしていくことになります。
そのひとつがブランドの多様化で、ブルイックラディ蒸留所で仕込むウイスキーをコンセプト別に3種類にわけ、それぞれ「ブルイックラディ」「ポートシャーロット」「オクトモア」とブランド化して販売するというものでした。
こうして生まれたポートシャーロットというウイスキーはじっさいに昔存在していたポートシャーロット蒸留所の名を冠しており、アイラ島のウイスキーとしては飲みやすかった「ブルイックラディ」にアイラウイスキー特有のピートをしっかりと使ってヘビーピートタイプのウイスキーに仕上げています。
アイラ島のウイスキーはふんだんに採取できるピート(泥炭)を用いてウイスキー作りが行われてきたため、特徴としてスモーキー、薬品香、薫製香を持っています。
ブルイックラディはアイラのなかでも特にピートを使わないウイスキーを作ってきたのですが、ピートの強いウイスキーを求める需要に対して「ポートシャーロット」「オクトモア」をブランド化することで人気を博しています。
徐々にリリースが増えるポートシャーロットの評価
ここ20年でウイスキーブームが巻き起こり、新しい蒸留所やブランドは増え続けています。
なかでもポートシャーロットは特に早く動きを見せていたブランドで、2010年前後のウイスキーブーム過渡期あたりからウイスキーをすでに飲んでいた人にとっては注目されていたウイスキーでもありました。
いっぽうで当時5~10年熟成の短熟ウイスキーは需要がすくなく(まだ市場に長熟もありましたし)、筆者も何度かポートシャーロットを飲んではいましたが、正直荒々しさばかりが強調されて感じてしまいお世辞にも好んで飲む銘柄とはなっていませんでした。
じっさい当時からウイスキーを嗜んでいる方々からの評価を聞いてもポートシャーロットに対する意見は決して高いものではなかったと思います。
ポートシャーロットさんいつのまにこんなにおいしくなったんです?5~6年前に短熟がポツポツ出てた頃に飲んで「うわー・・・」って思ってたのがはるか昔のよう。芯のある素晴らしいウイスキーに成長なされてビックリ!しばらく会わなかった姪っ子が気づいたら大人になってたみたいな衝撃 pic.twitter.com/tw3Vv7dLiG
— Jorge(ホルヘ)@ゆるーくおいしものを探求中 (@bollet_jp) March 22, 2019
そうしたなかで本当にここ1~2年前後の間にリリースされたポートシャーロットのなかに光るものを感じるボトルが増えてきて、昨年のオフィシャルボトルのリニューアルを機に、ウイスキー好きの間でもにわかに「ポートシャーロットおいしくない?」という再評価の動きが見えてきているように感じます。
「ポートシャーロット2011 アイラバーレイ」「ポートシャーロット10年」がなかなかの完成度
リフィルのワイン樽がいいアクセントで短熟感持たせずいい仕上がり。いっても2011だから初期の頃の5~6年モノと熟成期間にあまり差はないわけで、仕上げ方をブラッシュアップするだけでこうも変わるんだなと再認識。オフィシャルニューリリース久々に買ったけど個人的には大当たりでした。
— Jorge(ホルヘ)@ゆるーくおいしものを探求中 (@bollet_jp) March 22, 2019
昨年のポートシャーロットのオフィシャルボトルのリニューアルによって新たにラインナップされたのが10年とアイラバーレイ(2011)です。
アイラバーレイ美味しすぎてすごい勢いで減るから10年も買ってみた。アイラバーレイと比べると樽感が強くなってクセが減りいい意味で飲みやすい。ソーダ割りとかにも相性がいいですね。 pic.twitter.com/I6smGVxeAN
— Jorge(ホルヘ)@ゆるーくおいしものを探求中 (@bollet_jp) 2019年4月9日
ポートシャーロット10年はオフィシャルラインではじめて熟成年数を明記したもので、ファーストフィルのアメリカンオーク樽が65%、セカンドフィルのアメリカンオーク樽が10%、セカンドフィルのフレンチワイン樽が25%という熟成樽構成。
アイラバーレイ2011はアイラ島産の麦を100%使用した意欲作で、ファーストフィル・アメリカンウイスキー樽75%、セカンドフィル・ワイン樽(シラー、メルロー)25%という樽構成。
いずれもフェノール値40ppm(ピートによって付加されるスモーキーフレーバーの成分)、アルコールは50%と少し高めに設定されています。
両ボトル共にワイン樽を熟成に用いている点にも特色があり、これがまたなかなか絶妙なまとめ方をしてきています。
特にアイラバーレイ2011は6年という熟成の短さをまだ樽の成分が活き活きしているファーストフィルアメリカンウイスキー樽をベースに赤ワイン樽を交えて熟成することでカバー。
10年以上にまとまりを感じ、個人的にポートシャーロットの特長として現れやすいと思っている魚介ダシ系の風味、塩気、レモンやグレープフルーツを彷彿とさせる酸味を伴ったフルーツ感にワイン樽由来の甘みや渋みが絡み合って複雑さをも感じ取れる一本だと思います。
じっさいに筆者の周りでもアイラバーレイの完成度を評価する人が特に多かったように感じますね。
アイラウイスキー全体の高騰と枯渇にもポートシャーロット再評価の要因がある
ポートシャーロットがここにきてウイスキーラバーに再評価されているのはそれ自体の質の向上だけが理由ではないでしょう。
近年世界的なウイスキーブームのなかで、特に特徴的なアイラウイスキーは需要と供給のバランスが完全に崩壊し、おそろしいほどの値上がり傾向が続いています。
銘柄やボトルによってはお金を出しても買えないものも少なくなく、良質でコスパのよいアイラウイスキーに巡り合うのが難しくなっています。
そんななかでポートシャーロットのバランス感覚に優れながらも個性的な面も持ち合わせたニューリリースが注目を集めるのも当然のことかもしれません。
オフィシャルのリリースとしては少しプレ値ではありますが、それでも50%というハイアルコール仕様とそのクオリティを考えればじゅうぶんに飲む価値のあるウイスキーとして考えられそうです。
まとめ
オフィシャルボトルでははじめての年数表記となった10年、そして短熟ながらも完成度の高いアイラバーレイが個人的にツボにはまったポートシャーロット。
今後もさまざまなおいしいポートシャーロットがリリースされるかもと思うと期待が高まりますね。
ぜひ意欲的なリリースを待っています!
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*1:作り手が自分達で詰めているボトル