お酒やグルメの流行に興味のある人であれば、最近のキーワードとして知っておくべきお酒がクラフトジン。
ジンといえばカクテルの材料に使われる強いお酒というイメージしかない人もいるかもしれませんが、最近流行りのクラフトジンは多種多様な顔を見せる、そのまま飲んでも楽しめるものばかりです。
バーだけでなくレストランシーンやカフェ、居酒屋に至るまで注目されるクラフトジンの魅力と特徴、さまざまなクラフトジンを手にしてきた筆者のおすすめブランドについても語っていきます。
世界中で大人気のクラフトジンとはなにものなのか?
個性を重視する小規模生産のクラフトジン
クラフトジンとは小規模な作り手によって作られている少量生産のプレミアムなジンのことです。
ジンといえば穀物ベースの蒸留酒に植物のエッセンスを加えたもので、基本的にはカクテルの材料と考えられてきました。
しかし使う植物や原料への制限が明確に定まっていないため蒸留酒のなかでは自由度が高く、樽で熟成させる行程を必要としないため世界中どの場所でも安定性産できるという特徴があります。
そのためさまざまなオリジナリティを持ったジンの生産が可能であることに気づいた世界中の意欲あるクラフトマンがそのまま飲んでもカクテルでも楽しめる個性的なジンの生産に相次いで乗り出したのです。
"クラフト"はいまや飲食におけるトップトレンド
"クラフト=手作り"はジンに限らずお酒業界、もっといえば飲食全体においていまトレンドとなっているキーワードです。
われわれは大量消費やブランド志向の時代を経て、いま現在において消費するものにたいしてよりシビアな目で「なんのためにそれを買うのか」という価値を問うようになってきました。
そのなかでクラフト感のあるアイテムは作り手の顔や製品の背景が見えることでストーリー性が生まれ、より深くその製品を愛することができることから人気を博しています。
また玉石混淆にはなってしまいますが、大量生産を前提としないこだわりのある製法によってクオリティも高いものが多く、なかにはずば抜けてレベルの高いものがあるのも、宝探しのような感覚で楽しいものです。
クラフトジンの魅力と飲み方
いくらクラフトがトレンドになっているとはいえ、クラフトジンがここまで流行ったのにはクラフトのジンに魅力があったからにほかなりません。
クラフトジンの魅力としては「バリエーションの豊富さ」「さまざまなシチュエーションに対応する懐の深さ」が挙げられるでしょう。
バリエーションが豊富なクラフトジン
さきほども述べたようにジンは穀物に植物のエッセンスを加えた蒸留酒というかなりおおざっぱなくくりで定義されています。
なかにはベースに果物を使ったり樽で寝かせたりしているジンもあるので、かなり自由度の高いお酒です。
クラフト系のお酒は個性が売りになってきますか、当然奇抜な製法や素材を使ったりすることも少なくありません。
そうした作り方をするクラフト酒ともともと定義があいまいなジンというお酒はとても相性がよく、じっさいによくもこれだけ新しいブランドが出てくるなと思うほどクラフトジンは多種多様に存在し、それぞれに個性を持っているんですね。
クラフトジンのバリエーション豊かな飲み方と楽しみ方
クラフトジンがここまで流行したのは単体の魅力はもちろんですが、その汎用性の高さに目をつけたさまざまなメーカーや業界人の努力の賜物だということもできるのではないでしょうか。
たとえば最近、レストランでクラフトジンをオンメニューしているところが増えてきました。
なかにはコースのみで展開しているようなハイクラスのレストランが、ペアリングで料理と相性のいいお酒としてクラフトジンを提供することも増えています。
この背景にはクラフトジンのもつ時に繊細で時に大胆、そしてバリエーションに富んだ風味がいろいろな場面で活躍することが挙げられます。
スパイスばっちりのカレーと、クラフトジンをばっちり効かせたジントニックのペアリングは最強かもしれません。ジンはスパイスやハーブを複雑にミックスしたものに漬け込んでつくるスパイシーな蒸留酒なので、理屈としては非常にカレー的です。今度我が家でペアリングの会やろっと。
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) 2017年12月11日
バーでじっくりストレートやロック、カクテルにして飲んでもいいですし、食中酒としてソーダ割り、水割りで楽しむのにも適しているクラフトジン。
お茶やワインにも通ずるバラエティ豊かで華やかな香りがウイスキーやブランデーよりも気軽に楽しめることで、クラフトスピリッツとしてはクラフトビールに次いで使いやすいお酒として認識されているのでしょう。
酒オタクおすすめのクラフトジン5選
ここでは世界中のクラフトジンのなかから、筆者が知っているなかで「これは機会を見つけて飲んでほしい」と思える感動できるクラフトジンをピックアップして紹介していきます。
おすすめする基準としては「味の個性がハッキリしている」「そのまま(ストレート)で飲んでおいしい」「ボトルや造り手に物語性がある」という3点を重視しています。ぜひ珠玉のクラフトジンを楽しんでみましょう。
おすすめのクラフトジン1「モンキー47」
クラフトジンブームの火付け役ともいわれているモンキー47。多くの飲み手がこのジンによってジンのイメージを覆されたことでしょう。
47種類の植物のエッセンスを抽出した複雑な味わいは他を圧倒するクオリティ。ジン特有のジュニパーベリー香はおさえめ、クランベリーを使っているためほのかに甘酸っぱい香りがたまりません。
携帯会社ノキアの元マネージャーだったアレックス・スタインと天才蒸留士として名高いクリストフ・ケラーによって生み出されたこのジンはすべてのクラフトジンのなかでもトップクラスのクオリティを誇っていると思います。
まるで香水のような繊細で複雑で美しい香りを楽しみながら口に含んでみるとドライながら優しい口当たり。
飲み込んだ後にもボタニカルの香りが口内に漂う珠玉の一本で、ジンの概念が覆る完成度の高さにただ脱帽するばかりです。
おすすめのクラフトジン2「ニッカカフェジン」
今回紹介するなかでは比較的大手となるニッカウイスキーが製造しているジン。しかしその完成度は非常に高く、他のクラフトジンと並べても全くそん色ない完成度と個性を持っているためご紹介します。
カフェジンはニッカが所有するカフェ式連続式蒸留器という古いタイプの蒸留器によって作られます。
山椒やかぼす、柚子といった和製のボタニカルを配合しているのが特徴で、特に和山椒の爽やかな香りが鮮烈に香ってくるインパクトの強さが魅力的。
ロックやソーダ割で楽しめば食中酒としても最適でじつに楽しめるクラフトジンだといえるでしょう。
おすすめのクラフトジン3「ル・ジン」
りんごのブランデー、カルヴァドス「クール・ド・リヨン」を作るクリスチャンドルーアンが手掛けたジン。
特徴は何といってもカルヴァドスの原料でもあるりんごをベースにお酒を蒸留し、シナモンやジンジャーなど8種類のりんごとの相性もよいボタニカルを加えています。
まさにクラフトジンの自由さを存分に発揮した一本で、もともとはブランデーを作っている造り手が、自社の得意な材料とそれにあわせたボタニカルを使用することで生まれた全く新しいタイプのジンに仕上がっています。
りんごのほっこりとした風味とやわらかい口当たりが飲みやすく、いろいろなシーンで楽しめる一本となってくれます。
おすすめのクラフトジン4「ディスティレリ・ド・パリ ジン」
「飲める香水」と称されるパリで唯一のクラフトジン。
その異名はダテではなく、圧倒的に洗練された香りが立ち上がる一本で、グラスに少量注いで香りを嗅いでいるだけで楽しめるほどの逸品です。
かつてこんなに「良い香り」を放つお酒があったであろうか・・・何十年も熟成させたウイスキーやブランデーのような深淵を覗き見るような哲学的な香りではなく、ただただ単にうっとりできるオシャレな香りはまさにパリっ子らしいですね。
柑橘とコリアンダーを活かした「バッチ1」、香料の高級産地レユニオン島の新鮮なボタンカルを使用した「ベルエール」、キナ抽出物を入れることで炭酸割にするだけでジントニックを作れる「ジントニック」とシリーズで個性豊かなアイテムを展開しています。
おすすめのクラフトジン5「コーヴァル ドライ・ジン」
ロバート・バーネッカー、ソナト・バーネッカー夫婦によってアメリカのシカゴで立ち上げられたディスティラリー「コーヴァル」。
既成の枠にとらわれないジンやウイスキー造りを2008年から行うクラフトリカーの先駆けともいえる存在で、日本でも業界人やマニアックな一般人を中心に割と早い段階から注目されていました。
原料すべてをオーガニックにし、世界で最も厳しい食品規定「コーシャ(Kosher)」の認定も受けているコーヴァルジン。
非常にドライでスッキリとしており、どこか懐かしいような人のぬくもりを感じることのできる味わいはまさしくクラフトジンでしか出せない魅力にあふれています。
バレルエイジド(樽で熟成させたタイプ)もあり、こちらは樽熟成によりほのかな甘みが加わっています。
クラフトジンとはなにか?おすすめのクラフトジンのブランドを語る
まだまだ盛り上がりを見せるであろうクラフトジン。
特に日本では注目度が年々高まっており、市場も拡大し続けています。
皆さんも無数にあるクラフトジンのなかからお気に入りの一本を探してみると、お酒を飲む楽しみが広がるのではないでしょうか。
ぜひいろいろとチャレンジしてみくださいね。