ストローという食器・・・というよりも飲器を使ったことのない人はいないでしょう。特に赤ちゃんの頃はコップから直接飲み物を飲むのが難しいのでストローを使っていた人も多いはず。
そんなストローがいま、材質の関係で世界的に使用を禁止されようとしていることをご存知でしょうか?今回はストローの使用禁止に関するニュースを言及しながら、ふだんなかなか考えることのないストローの歴史と意味、その材質について改めて考えてみましょう。
ストローが材質の関係で使用禁止になる?
2018年5月28日、欧州連合(EU)の委員会でストローをはじめとするプラスチックの使い捨て食器を2021年をめどに使用禁止にする方針を発表しました。
欧州委:ストローなど使用禁止 使い捨てプラ製品で方針 - 毎日新聞
ニュースによりますと海洋汚染の原因のほとんどはプラスチックごみに依存しているとのことで、使い捨てが基本となるストローをはじめとする*1プラスチック食器を使用禁止にすることで、環境問題を改善する狙いがあるようです。
アメリカでもシアトルでは早くも今夏からプラスチックストローが使用禁止になるとのこと。ニューヨークなどでもこの動きが広がり、調整が進んでいるようです。
ストロー自体、大人になってしまえばなくても困らないものではありますが、それでもファストフード店やテイクアウトを主体とするドリンクストアでは大人にとってもストローは現役のアイテム。
実際になくなるとなるとどの程度の不具合が生じるのか、まだ想像の域を出ないところですが、大人はまだしも小さな赤ちゃんの飲用には適している部分もあることから、完全な禁止というよりは原則禁止のほうが良いのではないだろうかとも思えますね。(ニュースからは販売や製造まで禁止なのか、飲食店での使用が禁止なのかは言及されていません)
いっぽうでプラスチック食器を禁止にするということは代替品が必要になるとのことでもあり、この代替品が果たして本当に環境に対してプラスになるのかという疑問の声もあるようです。
コップなども少し前からマイボトルの持ち込みを推奨するお店は増えているものの、課金制となるとますますその動きは過熱していくことでしょう。
意外と知らないストローの歴史
今回ストローの存在そのものをゆるがすニュースが発表されたとのことで、せっかくなのでここで少しストローの歴史について学んでみましょう。
ストロー、材質の歴史は麦にあり
そもそも現代のプラスチックストローが定着するまで、ストローはどんな材質で出来ていたのでしょう?そしていつごろからそれはあったのでしょう?
ストローはもともと麦稈(ばっかん)、すなわち麦の穂を切り取り残った部分のことを指していました。すなわちストロー(staw)です。ストローハット(麦わら帽子)のストローですね。
紀元前4千年~3千年前のメソポタミア文明においては葦製のストローが使われていたとされていて、もともとは沈殿物の多い飲み物から液体のみをキレイに飲むためのものだったとか。
日本でも1950年代までは麦製のストローを使っていたというのですから驚きです。身近なご高齢の方に話を聞けば麦のストローについて懐かしく語ってくれるかもしれません。
ストロー材質の歴史は麦からポリプロピレンへ
その後ビニールの普及によってストローの材質はポリプロピレンに移行していきます。
ポリプロピレンは耐熱性が高く硬質ながら折り曲げに適していて、プラスチックとしては最も軽量の部類でもあり、ストローの材質としてとても優れています。
ポリ塩化ビニリデンやポリエチレンといった類似の材質については以下の記事も参考に。
www.oishikerya.com
ストローの線には意味がない?
さて、ここで余談になりますが、みなさんこんなストライプのデザインのはいったストローを見たことはありませんか?見たことあるもなにも、ストローの最もスタンダードなデザインといってもいいでしょう。
しかしこのストライプ模様。意味深にみえますがじつは特に意味がないということはご存知でしたでしょうか?単なるデザインとして入れたところ人気商品となったため、ストローのデザインとして定着したのだとか。
ストローの材質がポリプロピレンになることで加工のバリエーションが増え、デザインやカラーなどさまざまなストローが登場しました。あまり意識することはないかもしれませんが、お店や売り場で注目してみるのも楽しいですね。
ストローが材質の関係で使用禁止になると不便も?
ストローをはじめプラスチック製食器は本当に必要か?
さてこのように大げさに言えば人類の発展と共に歴史を歩んできたストローが、材質の関係から世界的に使用が禁止される動きにあることは仕方のないことなのでしょうか。
確かに私たちは日頃から利便性を追求し過ぎているのかも知れません。プラ材質系の食器は洗う手間もなく割れることもなく安く、どんな場所でも気を使う必要なく使えることから今では生活に溶け込んでいるアイテムです。
本当にストローが禁止された場合はこの手の飲料はどうなってしまうのだろうか?
しかし逆に言えばこれらの製品は絶対になくてはならないものではありません。食器は洗えば再利用できるのが基本です。特にストローに関してはフォークやスプーンと比べて必ずないと困るものではないため、ストロー禁止によって環境問題にあきらかな改善が見られるのであれば、今回の動きはむしろ私たちも真剣に考えていくべきことなのかもしれませんね。
探してみるとステレンスのストローなども販売されているようです。専用の洗浄器もついていて、お手入れすれば衛生的に使えそうですね。なかなかファストフード店などでこのようなストローを導入するのは難しいでしょうが、ストローなどのプラスチック食器の使用禁止に伴い、これらの飲食店がどのような対応をとるのか注目したいところです。
ストロー使用禁止は赤ちゃんにとっては不便な面も・・・
ストローの使用禁止に伴い最も困りそうなのはやはり赤ちゃんはじめ小さなお子さんに飲み物を飲ませること。適当な量を簡単に吸い込めるストローは、まだコップから直接飲み物を飲むのが大変なお子さんにとってはかなり重宝するものでもあります。
もちろんストロー使用禁止といっても、プラスチック製のものがダメだという話でしょうからさきほど紹介したステンレスのような代替品が出てくる可能性もあります。
しかし清掃の面も考えると少なくともファストフード系の飲食店での使用は現実的ではないでしょうし、小さな子供用の食器としては使用を許可するというような対応も考えるべきでしょう。
まとめ
今回はプラスチック製のストローの使用禁止が世界的に実現していきそうだというニュースを受けて、ニュースのまとめと所感、ストローの歴史についても見てきました。
まだ日本では特に動きがないようですが、海外の動きを受けて少しずつ日本でもこれらの品が使われなくなることもあるかもしれません。今後もしかしたら麦のストローがまたみられるようになる可能性もあるかもしれませんね。それはそれで風情があっていいですが。
人類は今日に至るまでさまざまなものを生み出してきましたが、近年ではそうしたもののなかから意図的に禁止されるものも増えてきたように感じます。今回のプラ製食器以外では分かりやすいところではタバコ、身近なところで白熱球なんかもそのひとつ。
今後人類はどのようなものを禁止していくのか、興味がありつつも怖い面もあるなと感じたニュースでした。
参考:ストローの豆知識 | スペシャルコンテンツ | シバセ工業株式会社 -Official Site-
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便利な使い捨て食器が淘汰される流れがある今こそ、歴史のある食器に注目していきたいですね。
*1:他、プラチック製のマドラーや皿なども対象とのこと。コップは課金制、ペットボトルは回収を徹底する方針