ここ最近日本のウイスキー、いわゆるジャパニーズウイスキーが世界的なブームになっています。国内でも多くの人が注目しているだけに、いままでウイスキーに興味のなかった人も「日本のウイスキーはすごい」という認識が強まってきました。
せっかくウイスキーに興味を持ったのなら、もっと広い視野でウイスキーを楽しんでみてもよいのではないでしょうか?ここではウイスキーのジャンルとして確立されているスコッチウイスキーとジャパニーズウイスキーを比較しながら、その違いや美味しさについて触れつつウイスキーのより深い楽しみ方を考えていきましょう。
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ジャパニーズウイスキーはスコッチと似ている?
日本のウイスキー、すなわちジャパニーズウイスキーの歴史は1918年、竹鶴政孝という人物がスコットランドのグラスゴー大学で蒸溜技術を学ぶところから始まったと言われています。
竹鶴政孝はあの余市や宮城強で有名なニッカウイスキーの創設者にして日本ウイスキーの父と言われる人物。2014年にNHKの連続テレビ小説で題材になったことでお茶の間の知名度も高まりました。
サントリー、ニッカをはじめ多くの酒蔵や酒販関係者がウイスキー作りに着手、結果的にはサントリー製品が売れるばかりで他の蒸留所は鳴かず飛ばずの冬の時代が続きます。
その後2000年代にはいるくらいから世界的なウイスキーブームの後押しも受けて国内外で日本産ウイスキーの価値が認められはじめ、ここ数年でそのブームはピークとも呼べるほどに。サントリー製品やニッカ製品は需要の増加に耐え切れず商品ラインナップを繰り返す事態にまで発展しています。
一部商品にはオークションなどを通して信じられないほどの高値がついたり、品薄が続いてプレミア化が進行する中でジャパニーズウイスキーの行く末を心配する人も多いのですが、ここまで有名になると今まであまりウイスキーに興味の無かった人が妄信的に国産ウイスキー信者になってしまうケースも少なくないのではないでしょうか。
しかし大元を辿れば日本のウイスキーはスコットランドのスコッチウイスキーにその原点を見つけることができます。じっさいにジャパニーズウイスキーの基本的なウイスキーとしての分類はスコッチーウイスキーを倣っているのです。つまりウイスキーという分野の中では違いの少ない者同士と言えます。
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基本的なウイスキーの作り方は世界的に見ればスコットランド系かアメリカ系に分けられる。スコットランド系は原料として大麦麦芽を重視する傾向にあり、ピートといった独特の香りを放つ材料を製造過程で使用することが多い。詳しい分類などは上記の記事などを参考に。
肝心な味わいの傾向も基本はかなり近いものがあります。確かに日本産は繊細で優しい感じもあり、和のエッセンスを感じられる美酒ですが、スコットランド産の厚みのある味わいと複雑味があったりクセがあったり素朴さがあったりといった多様性はウイスキー造りに数百年の歴史を持っているからこそできるものではないでしょうか。
甲乙つけるのは難しいですが、ごく個人的な主観から言わせてもらえば、ウイスキーの分類としてみたときにはまだまだスコッチウイスキーの方に魅力を感じてしまいます。
ジャパニーズウイスキーとスコッチの違い
ジャパニーズとスコッチが作られる国とその定義の違い
両者の違いは当然作られる国の違いによって考えられます。しかし下に挙げた記事内でも述べているように、日本のウイスキーはまだまだ定義が曖昧で、日本でボトルに詰められればジャパニーズと名乗れてしまいます。極端な話、海外から持ってきたウイスキーを日本で商品化すればジャパニーズウイスキーになってしまうのです。
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対してスコッチウイスキーは国によって厳格に統制されています。たとえばスコットランドで熟成されなければならないこと、最低3年の熟成が必要なこと、最低でも40%以上のアルコールをもっていることなどが定義されているのです。*1
こうした点からも、一見ブランド化されて価値が向上しているようにみえるジャパニーズウイスキーという分野がまだ完成されたジャンルではないということが見えてきます。
ジャパニーズウイスキーとスコッチの味の違い
ウイスキーの味わいは原料や熟成場所、方法などによって大きく変化していくそうです。
たとえば大きな違いを生み出すといわれている水。以前サントリーの白州蒸留所に見学ツアーにいかせてもらったさいに、工場の方から「白州のクリアで繊細な味は水に秘密がある」という話を聞きました。いわく白州を仕込んでいる水は当時の日本産ウイスキーのなかでも特に軟水だったそうで、それが軽やかでキレのある味わいに繋がっているのだとか。スコットランドは基本的に硬水なので、その点で比べてもジャパニーズとスコッチには味の違いが生まれるのでしょう。
なかにはスコッチのほうがクセが強くて苦手という人がいますが、これは半分正解で半分は間違いです。たしかにスコッチのなかにはクセの強い銘柄が多数存在しますが、日本でも白州や余市といった銘柄は比較的クセがありスコッチのなかでも中~強程度のクセがあります。しっかりと味のバリエーションを把握すればスコッチもジャパニーズも飲みやすさでは変わりありません。
しかしそうした製造過程の違いをのぞいても、スコッチのほうがジャパニーズよりもはるかに造り手が多く、加えて味のバリエーションも豊かです。日本国内でも新しい蒸留所が次々と誕生していますが、これらがまともにラインナップに加わるまでは何年も待つ必要があります。
ジャパニーズは確かに年々その精度を上げていて、ウイスキーのレベルとして考えたら世界的にみてもトップレベルにあるでしょう。製法も似ているので味の大枠はスコッチと限りなく近しいものがあるのですが、味のバリエーションという意味ではやはりまだスコッチには敵わないでしょう。
ジャパニーズウイスキーとスコッチの手に入りやすさの違い
スコッチの持つ味のバリエーション、多様性はじつに魅力的です。スコッチも最近では手に入りにくい銘柄や高騰している銘柄が少なくありませんが、それでもそうした銘柄を選択肢から除外した上でも魅力的なものがたくさんあります。
対してジャパニーズはサントリーやニッカの一部商品に圧倒的なプレミアがついて手に入りにくくなるいっぽうで、それ以外の蒸留所はまだまだ粗削りなところが多く一般流通もあまりしていません。
コスパや入手のしやすさという観点からみても、単純にウイスキーを楽しみたいならスコッチウイスキーを推したいところです。
ジャパニーズ好きなら違いの少ないスコッチに目を向けてみよう
筆者も決してジャパニーズが嫌いなわけではありません。ただここ最近のジャパニーズウイスキーブームのなかで「ウイスキーといえばジャパニーズ」といった風潮ができてしまうのは悲しいかなとも思うのです。
プレミア化したり入手困難になっているということもありますが、単純にひとくちにウイスキーといってもジャパニーズウイスキーに匹敵するおいしい美酒は世界にいくらでもあるのです。
スコットランドに限らず、アメリカやアイルランドといった同じく世界的なウイスキーの産地、最近では他の国でもウイスキー造りが盛んにおこなわれています。
ジャパニーズウイスキーのブームを受けてウイスキーに興味を持った人、もともとジャパニーズウイスキーが好きだった人にはこの機にぜひ他の国のウイキーにも目を向けててほしいですね。
なかでもジャパニーズと根本的な製法が共通していて、味のバリエーション、商品数、価格帯といった面でバリエーションが豊富なスコッチウイスキーはジャパニーズウイスキー好きにぜひ試してもらいたいウイスキーだといえるでしょう。
まとめ
ジャパニーズウイスキーとスコッチウイスキーの違いについて確認しながら、両者の魅力を再確認してきました。日本のウイスキーは世界に誇れるお酒ですが、一方で生産量やプレミア化の影響で消費者に必ずしも優しくない存在になっていることは否めません。私たち消費者が妄信的にジャパニーズの価値を信じることもジャパニーズのお酒としての純粋な価値を低下させる要因にもなっているように感じますね。
ひとつのウイスキーとして、ひとつのお酒として楽しんでいくためにも、ジャパニーズウイスキーが好きな人には今だからこそ他のウイスキーにも目を向けて欲しいなと思います。
どちらがおいしい、どちらが優れているという話ではないのですが、ウイスキーは結局のところ嗜好品ですから、ぜひいろいろと経験して無理のない範囲で楽しんでいきたいですね。
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