ゴルドベルク(ゴールトベルク)変奏曲はバロック時代の作曲家でクラシックの父とも呼ばれる作曲家バッハが作った楽曲です。
とても優雅で優しく耳なじみの良い曲であり、メロディアスな部分も多いため知っている人、聞き覚えのある人も多いことでしょう。
不思議な魅力のある曲で、筆者は疲れを感じた日にこの曲をかけることが多いです。バッハには失礼かもしれませんがBGMとしてもとても優れているように思います。
本記事ではそんな名曲ゴルドベルク変奏曲の数ある録音の中からまずは聞いてほしい名盤をピックアップしてみました。
シンプルな展開の曲にもかかわらず弾く人によって非常に個性があらわれる楽曲です。ぜひ聞き比べてお気に入りの奏者を探してみてはいかがでしょうか。
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名盤も多いバッハのゴルトベルク変奏曲
ゴルドベルク変奏曲はバッハのクラーヴィア練習曲と題された一連の楽曲の最後の作品です。
当時不眠症に悩んでいた伯爵のために眠れぬ夜の鬱屈とした気分を晴らすために作られた曲としても有名で(この逸話には疑問点も多いとされている)、そのやわらかく心地のよい曲調からBGM利用されることも多い楽曲でしょう。
筆者がゴルドベルク変奏曲に興味を持ったのも2006年に公開された細田守監督の「時をかける少女」の劇中に使用されていたことがきっかけでした。
ほかにも映画「羊たちの沈黙」「イングリッシュ・ペイシェント」などで使用されています。
しかし実際に演奏するには高度な技術を要求される曲で、プロのピアニストが演奏した録音のなかでも曲の知名度のわりには名盤と呼ばれるものは少ない印象。
もともとはチェンバロのための楽曲でしたが、20世紀を代表するピアニストのひとりであるグレングールドが1955年にデビュー曲としてピアノ演奏を録音。
これが大ヒットしたことで曲の魅力が再認識され、以後チェンバロやピアノに限らずギターなどでも演奏される機会が増えました。
奏者の個性がとても出やすく、クラシック音楽の魅力がわかりやすい楽曲のひとつだと思うので、ぜひいろいろと聞き比べてみたいですね。
ゴルドベルク変奏曲のおすすめ名盤と奏者4選
グレン・グールドのゴルドベルク変奏曲
ゴルドベルク変奏曲と聞いてパッと思い浮かぶ奏者は何人かいますが、やはり真っ先に挙げられることが多いのはグレングールドでしょう。
クラシック界の異端児としてさまざまな伝説を残したピアニストですが、1955年にデビュー時に録音したのがゴルドベルク変奏曲でした。
当時この楽曲はピアニストのレパートリーとして一般的なものではなかったため、レコード会社からもNGが出たそうですが、グールドは反対を押しきって録音します。
結果1956年に発売されたグールドのゴルドベルク変奏曲は大ヒットし、その後のゴルドベルク変奏曲への認識すらも変えてしまいました。
グールドは死の直前の81年に2度目のゴルドベルク変奏曲を録音。
55年版と聞き比べると弾き方の差は誰が聞いても明白で(まず演奏時間が1.5倍ほど長い)グールドのこの2回の録音を聞き比べるだけでも楽しむことができるでしょう。
最近久々にグレングールドのゴルドベルクをよく聞いている。
— Jorge(ホルヘ)@おいしいをゆるーく探求するメディア「おいしけりゃなんでもいい!」運営中 (@bollet_jp) June 24, 2019
いままでずっと晩年の演奏ばかり聞いていたんですが、最近は初期の演奏も爽やか軽やかで踊るようなイメージで楽しい。
同じ曲を演奏しているのにかたや38分、かたや51分という表現の違いも面白い。 pic.twitter.com/4ltdGuwUIE
いずれの演奏も他の奏者のゴルドベルクと比べると非常に軽快でスピーディーにクールに演奏されておりグールド節が炸裂。
個性的な演奏でありながらも心地よく楽曲を楽しめる演奏としてまずは押さえておきたい名盤です。
若さとパワーのある尖りまくった55年の録音も捨てがたいですが、筆者個人の好みとして死を間近にひかえた悟りすらも感じる81年の演奏を推しておきます。
- アーティスト: グレン・グールド
- 出版社/メーカー: SMJ
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アンドラーシュ・シフのゴルドベルク変奏曲
バッハ弾きとして有名なハンガリー人アンドラーシュ・シフのゴルドベルクも忘れることはできません。
シフは82年と2001年の2度この楽曲を録音しています。
彼のゴルドベルクは端正で綺麗という形容詞がよく似合います。
同じくゴルドベルクの代表的な奏者として有名なグレングールドと比較されることも多いシフですが、流れるような弾き方をするグールドと対照的に時間をかけて丁寧に演奏されています。
ハンガリー人アンドラーシュ・シフのゴルドベルク変奏曲。こちらは2001年録音されたもの。
— Jorge(ホルヘ)@おいしいをゆるーく探求するメディア「おいしけりゃなんでもいい!」運営中 (@bollet_jp) 2019年6月29日
シフは2度この曲を録音していますが、どちらも軽やかで温もりのある演奏に好感が持てます。
グールドのクールで没入感のある演奏と比べると楽しみながら聞けるのがイイ
にしてもパッケージのECM感・・・ pic.twitter.com/EOD7IraGy1
優しく包み込むような音色が特徴的で、温もりのある演奏を聞きたい方はグールドよりもシフのほうが好みにあうかもしれません。
シフのゴルドベルクは個人的には二度の録音で大きく変化したようには感じませんが、聞き比べると2002年に録音されたものに魅力を感じました。
Bach: Das Wohltemperierte Clavier
- アーティスト: J. S. BACH
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ウィルヘルム・ケンプのゴルドベルク変奏曲
ゴルドベルクはグールドとシフの演奏が目立ちすぎていて他の演奏がなかなかピックアップされませんが、ウィルヘルム・ケンプもぜひ聞いてみてほしいです。
ケンプは作曲者であるバッハと同じくドイツ人です。
ドイツ人の演奏家は楽曲に対するアプローチがまじめで、特にクラシックを聞きなれていない人には堅苦しく聞こえてしまう傾向もあると思います。
しかしそうしたスタンダードな演奏を聞いてこそ楽曲の持つ魅力や他の演奏者の特徴を浮き上がらせることができるのではないでしょうか?
とはいえケンプのゴルドベルクは決して堅苦しくて聞きにくいものではなく柔らかな響きとシンプルな旋律を持っています。
特に冒頭のアリアでは省略されている音が多く、一聴するとグールドやシフよりもはるかに個性的に感じられるはずです。
難しさのないケンプの演奏はゴルトベルク=不眠症の人のための楽曲という逸話をもっとも表現しているように感じられ、こうした楽曲の製作背景までも実直に表現した結果なのだろうか・・・と思える魅力的な演奏だと思いますね。
- アーティスト: ケンプ(ヴィルヘルム),バッハ
- 出版社/メーカー: ポリドール
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グスタフ・レオンハルトのゴルドベルク変奏曲
今回紹介したなかでは唯一のチェンバロ奏者の演奏。
グスタフ・レオンハルトはチェンバロ奏者の代表であり、現代においてチェンバロの地位を築いた人物といっても差し支えないでしょう。
ピアノと異なり起伏の無いチェンバロはともすれば単調な味気ない音になってしまいがちですが、そうした楽器の特性とそうした楽器で演奏することを前提として作られたバッハの楽曲(バッハの時代にはピアノはない)に対する正確な理解と技術を持ち合わせた奏者の演奏には非常に魅力があります。
レオンハルトは3回ゴルドベルク変奏曲を録音しており、そのどれもが心洗われるような美しい演奏です。
チェンバロ奏者といえばリヒターやヴァルヒャといった奏者も忘れては入れませんが、レオンハルトは彼らと比べてもシンプルで飾り気がない演奏だと思います。
楽曲の素を見せてくれる奏者としてぜひ一度は耳にしたいレオンハルトのゴルドベルク変奏曲でした。
- アーティスト: レオンハルト(グスタフ),バッハ
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ゴルドベルク変奏曲のおすすめ名盤のまとめ
本記事では筆者が日頃から愛聴しているクラシックの楽曲「ゴルドベルク変奏曲」のおすすめの奏者と名盤を紹介してきました。
同じ楽曲でもその日の気分で聞き分けると常に新鮮な発見に溢れているのがクラシック音楽の魅力のひとつだと思います。
クラシックというと難しいイメージもありますが、ゴルドベルク変奏曲は堅苦しさを感じさせないクラシック界のヒーリング音楽です。
ぜひこの機会にいろいろな演奏を聞き比べてみてください。
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