エポワスというチーズは奥深いチーズの世界を知っている人ほど虜になってしまうのではないでしょうか?
何を隠そう数々のチーズを食べてきた筆者もすべてのチーズのなかで5本の指には入るであろうというほど好きなチーズです。
ウォッシュタイプ特有の「脱ぎたての靴下のにおい」などとも表現される強烈な香りをまとっているにも関わらず、不思議とひとくち、またひとくちと食べてしまう魔力を持っています。
本記事ではそんなエポワスの魅力を、特徴・味・食べ方といったところから紹介していきます。
食べ合わせや飲み合わせを意識することで一段階美味しさが高まる通好みのチーズにぜひ挑戦してみてください。
- エポワスはウォッシュタイプを代表するチーズ
- 雑巾、足の裏の臭いなどと表現されるエポワスの味わい
- エポワスの食べ方
- エポワスの保存方法
- エポワスの値段
- ワインやマールと合わせて真価を発揮するエポワス
- 「エポワス」チーズの味、食べ方、値段のまとめ
エポワスはウォッシュタイプを代表するチーズ
このチーズはフランスのブルゴーニュ地方にあるエポワス村発祥の伝統あるチーズです。
1991年にAOCを獲得してからはフランス全土で作られているフランスを代表するチーズのひとつです。
ウォッシュチーズと呼ばれるチーズのジャンルのなかで代表的なものとして挙げられることが多く、ナチュラルチーズに詳しい方なら必ず耳にする名前でしょう。
ウォッシュチーズ
チーズ表面を塩水やお酒で洗って(ウォッシュして)熟成させるチーズの1ジャンル。
表面にリネンス菌という菌が繁殖して独特の香り(時にお父さんの足の臭い、雑巾の臭いなどと呼ばれる)がする。
その一方で深みが増して他では体験できない味わいになることから、チーズのなかでも青カビチーズ以上に嗜好性の強いジャンルといえる。
淡いオレンジ色の表面とクリーミーな内側で見た目はなんだか可愛らしい。
500年以上前から現地の修道院で作られていたと言われており、特徴的な製法として一般的に塩水で洗うことの多いウォッシュチーズですが、エポワスは塩水にマールというお酒を混ぜてウォッシュしています。
マール
葡萄の絞りかすから作られるブランデー。
ブルゴーニュ地方はワインの名産地であり、ワインを作るときにでた葡萄のカスを利用してマールもたくさん作られている。
そのため特有のコクと香りを持っていて、お酒のおつまみとしても特に優れた性質を持っていることからバーやレストランのおつまみとしても好んで使われます。
雑巾、足の裏の臭いなどと表現されるエポワスの味わい
エポワスは非常に個性的な味わいのチーズです。
一般的にクセが強いとされるウォッシュチーズのなかでも特に強めの味わいで、熟成して中身がトロトロになるころには文字通り雑巾や足の裏を彷彿とさせる香りが生まれてきます。
しかしこの香りに惑わされず一口パクリと食べてみてください。
そしてじっくりと口のなかで溶かすように味わってみましょう。
香りの奥から広がる濃厚なミルクの甘みとチーズのコクが香りと混じりあって、複雑な味わいを生み出していることに気づくはずです。
この魅力は決して言葉で言い表せるようなものではありません(他に似たような食材がないので)。
ぜひ一度食わず嫌いせずにチャレンジしてみてほしいですね。
エポワスの食べ方
エポワスに限らず熟成の進んだナチュラルチーズは非常に奥深い味わいを持っていますが、その一方で強烈なクセもある食べ物なので一口は小さく、少しずつ楽しむのが基本です。
特にウォッシュチーズはお酒のおつまみとして非常に相性がいいので、お酒が楽しめる方はぜひおつまみにチョイスしてみてほしいところ(合わせたいお酒は後ほど解説)。
もちろんお酒を飲まない人でもエポワスを楽しむことができます。
おすすめはシンプルなパンにちょこっと乗せるという食べ方。
特にバケットなどハード系の固いパンがおすすめで、噛めば噛むほど口のなかでパンとチーズが混じりあい、不思議とエポワスのクセが小麦の香りと馴染んで絶妙な風味を生み出します。
外皮の臭いが気になるという人は中身だけをくりぬいて食べるというのもオススメです。
ほかにも蒸かしたじゃがいもとあえて食べるのもおすすめで、穀物×チーズという王道の組み合わせがウォッシュ特有のクセによって感動的な味わいに変化するのを楽しめます。
エポワスの食べ頃
エポワスは若いうちは香りも穏やかで外皮も中身もかたく食べやすい味わいですが、熟成が進むにしたがってトロトロになり外皮から強烈な香りを発するようになります。
一般的にはトロトロしはじめた頃(指で外皮をおすと明らかに柔らかいと感じる程度)が食べ頃といわれていますが、少し固めの状態やもっとトロトロの状態が好みという人もいます。
はじめて挑戦する方は、まずは少し固めの状態からちょっとずつ食べていって好みの味わいを探ってみるのもオススメです。
エポワスの保存方法
エポワスは保存にちょっとだけ気を遣うチーズです。
基本的にチーズのなかでも特に乾燥に弱いので切り口はもちろん外皮もしっかりとラップで包みます。
容器の木箱があれば戻して木箱ごとアルミホイルで包んだ後さらにラップで包み、ポリ袋などに入れて野菜室など温度が一定の場所に保管します。
もししばらく手を付けないようであっても2日置きくらいにはラップを取り替えて蒸れて腐敗するのを防ぐようにしましょう。
エポワスの値段
エポワスはナチュラルチーズのなかでは比較的高価なチーズです。
このような木箱に入った状態がワンホールで値段もブランドやショップによって違いはあるものの、おおよそ3000~4000円程度。
ハーフカットで販売しているところがあればその半額程度で手に入ることもありますが、ホール状態で熟成させるのが基本なのであまり見かける機会はありません。
しかしホールで買っても保存に気を付ければ熟成するのを楽しみながら1~2週間程度は食べることが可能。
ホームパーティーやグルメな方へのお土産などにも適した存在感なので、覚えておいて損はないでしょう。
特にエポワス人気を確固たるものにしたベルトー社の商品は比較的手には入りやすいので、ぜひチェックしてみてください。
ベルトー社
一時はチーズの王などとも称されていたエポワスですが、その強烈な個性によって生産者は激減し20世紀半ばには片手で数えるくらいしかいなくなってしまいました。
その事態に危機感を覚えたのがベルトー社の社長ロベール。
ブルゴーニュ生まれでもあった彼は故郷の伝統的なチーズであるエポワスを復刻させるべく尽力し、AOCを獲得するまでに至りました。
こんにちのエポワスの隆盛はまさにベルトー社のおかげといっても過言ではありません。
ぜひ一度ベルトー社のエポワスを食べてみてはいかがでしょうか。
ワインやマールと合わせて真価を発揮するエポワス
クセの強いエポワスチーズですが、お酒のおつまみとして合わせることで真価を発揮します。
特に果実味のしっかりとしたワイン、エポワスを作るのに使われるマールや同じく滓とりでイタリアで作られるグラッパなどとも素晴らしい相性です。
ワインは原産地であるブルゴーニュを代表するピノノワールの赤ワインはもちろんですが、個人的にはスパークリングワインをオススメします。
エポワスの強烈な個性が口に残った状態でスパークリングワインを流し込むと、不思議とワインの香り、炭酸と混じりあって旨味に変わるからです。
エポワスとお酒のマリアージュはエポワスの香りをいかに旨味へと変換できるかにかかっています。
そのためワインに限らず「ボディがしっかりした濃口系」「香りが立つタイプのお酒」という点をおさえて選ぶのがおすすめですね。
「エポワス」チーズの味、食べ方、値段のまとめ
本記事ではエポワスチーズの味、食べ方、値段について紹介してきました。
このチーズはなかなかチーズ初心者には手ごわいチーズといえますが、一度その味わいの奥深さを知ると虜になってしまう魅力を秘めたチーズでもあります。
ぜひ一度挑戦してみてください。