2018年9月12日、少しお酒・・・特に洋酒に詳しい人であれば馴染のある海外ビール「レーベブロイ」をはじめとする3ブランドの国内販売をアサヒが取りやめるという(一部の人に)衝撃のニュースが入ってきました。
調べてみると国内販売は今後検討されていないということで、今回はこのビール業界を震撼させるニュースについてまとめていきたいと思います。
※2019年10月にレーベンブロイが正式に再発売されました。詳しい経緯は以下の記事にて紹介しているのでご参照ください。
レーベンブロイが再発売!味はどうなった?|国内生産から韓国生産へ切り替わって登場
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- アサヒ、「レーベンブロイ」、「バスペールエール」「ベルビュークリーク」を国内終売に
- クラフトビールブームにおされて…?今後は自社製品に注力
- 今回国内販売終了、終売となるビールのブランドとは?
- アサヒの海外ビールに対する取り組みの流れ
- 今のうちに堪能しておきたい「レーベンブロイ」、「バスペールエール」「ベルビュークリーク」
アサヒ、「レーベンブロイ」、「バスペールエール」「ベルビュークリーク」を国内終売に
9月12日の日本経済新聞(電子版)は以下のように報じています。
アサヒビールは2018年内をめどに、国内で販売しているドイツの「レーベンブロイ」など海外ビール3ブランドについて、在庫がなくなり次第、販売を終了する。
今回販売が中止になるのはレーベンブロイ含め、バスペールエールとベルビュークリークを含む3銘柄。ビールマニアとはいかずとも、海外ビールの取り扱いのあるお店に行った経験のある人なら誰もが知っているメジャーブランドです。
クラフトビールブームにおされて…?今後は自社製品に注力
アサヒの2017年度のビール系飲料の販売においては、3ブランドのシェアはわずか0.3%。そもそものビール需要の低下に加え、日本国内の地ビールブームや世界各地の新鋭ビールメーカーの誕生におされ、いままで海外系のビール飲料としてはまず最初に名の挙がっていた3ブランドも売り上げを減らしていたのでしょう。
もともと市場規模の想定が小さいクラフトビールに対して、アサヒ的には思ったような利益をとれない3銘柄を手放した方がいい判断したのでしょうね。
9月13日のライブドアニュースによれば
販売終了の理由について広報室は「アサヒグループホールディングスによる(英国にあったビール会社)旧SABミラー社の欧州事業買収後、アサヒグループは多数の欧州系ビールブランドを保有しています。例えばイタリアの『ペローニ』、チェコの『ピルスナーウルケル』、オランダの『グロールシュ』などです。このような環境にある中、当社は自社グループブランドへ注力し、さらに魅力的な商品の構築を実現していきます。このような方針に基づき、3ブランドの販売終了を決定しました」としています。
というように報道しており、いままで自社のビールと共に海外ビールブランドの展開も意欲的に行っていたアサヒですが、思ったような成果が上がらないのか、これを整理して自社ブランド製品に注力していく構えをみせているようです。
今回国内販売終了、終売となるビールのブランドとは?
レーベンブロイ
レーベンブロイはビールの故郷といわれるミュンヘンで生まれたドイツビール。
600年に渡る長い歴史を持つビールで、世界的に見ても老舗のブランドだといえます。
日本では1983年以降にアサヒが国内生産のライセンスを獲得し、日本国内の工場でレーベンブロイを製造・販売していました。*1以後、日本国内でも知名度の高い海外ビールの代表格ですね。
ジャーマンスタイルとも呼べる"ピルスナー"ビールで、今回終売になるブランドのなかでは最も日本人になじみのある味わい。キレとコクがあり、料理なと一緒に楽しむのに適しています。
終売となっていたレーベンブロイが2019年の10月に再発売されました。
再販売までの経緯などは以下の記事にして紹介していますのでご参考までに!
バスペールエール
"エール"ビールは今でこそ各地方のクラフビールや大手の参入もあり一般的になった上面発酵のフルーティーなビールタイプですが、一昔前までエールといえばバスペールエール一択の時代がありました。
パブやバーでもエールといえばバスペールエールが基本でしたね。イギリス生まれの伝統的なペールエールで、赤みがかった美しい琥珀色が特徴。ほんのり甘みがありフルーティ。しかし決してぐとくない味わいがフライや肉料理とも相性抜群。
パイントと呼ばれる大きなグラスで飲むのが本場イギリス流。国内の飲食店でこんな飲み方も出来なくなると思うと少し悲しいですね。
580ccの巨大グラスは海外のビアグラスとしては一般的なサイズ。日本でもビアバーなどで見かけることができる。ベルビュークリーク
ベルギービールを代表するベルヴュークリークはランビックと呼ばれる自然酵母から作られるベルギーの伝統的なビアスタイル。クリークと呼ばれるさくらんぼを加えることで甘さと酸味、そして美しいルビー色を獲得したビールです。
女性受けもよく、フルーティーで飲みやすいビールは数あるベルギービールのなかでも人気の銘柄でした。
アサヒの海外ビールに対する取り組みの流れ
アサヒビールは1982年11月、ドイツのレーベンブロイ社とライセンス契約を結び、1988年に「バス ペールエール」、1996年には「ベル・ビュー クリーク」も国内代理店として販売を開始しています。海外ビールブランドも取り入れ、日本国内でのビール市場を独占状態であったともいえる当時のアサヒは、その後もさまざまな海外ビールブランドを販売しました。
その後2017年に当時SABミラー傘下だった西欧ビール 4 社とABインベブ傘下だった中東欧ビール 5 社を買収。それに伴い国内販売代理店として取り扱っていた「ヒューガルデン」、「ステラ・アルトワ」、「レフ」のブランドを手放し、他社にゆだねています。
今回はそのなかで国内販売代理店として継続して持ち続けていた3つのブランドを手放すという話になったわけです。
ヒューガルデンはベルギービールを代表するホワイトエール。オレンジ、コリアンダー、りんご、アプリコットのような香りを持つフルーティーなタイプのビール。
おそらく2017年に買収という形で自社傘下におさまった9社の海外ビール会社の製品と違い、あくまでライセンス契約で国内製造・販売をしていた「レーベンブロイ」、「バスペールエール」「ベルビュークリーク」は利益率もさしてよくなく、加えて売り上げもクラフトビールブームなどにおされ伸び悩んだことで今回の決定になったのだと思います。
「ヒューガルデン」、「ステラ・アルトワ」、「レフ」を手放した際にはるABインベブ・ジャパン株式会社が国内の販売を引き継いだものの、今回の三ブランドに関しては引き継ぐ会社はおらず、ブランドを統括するABインベブ・ジャパン株式会社も今後日本で「レーベンブロイ」、「バスペールエール」「ベルビュークリーク」を販売する予定は今のところないと述べているとのことでした。
今のうちに堪能しておきたい「レーベンブロイ」、「バスペールエール」「ベルビュークリーク」
「レーベンブロイ」、「バスペールエール」「ベルビュークリーク」がビール市場のわずか0.3%のシェアしかなかったことに驚きですが、たしかに筆者も最近これらのビールを飲む機会がありませんでした。
日本のクラフトビールも成熟期を迎え、品質的にもマーケット的にも大手が無視できないほど成長していますから、そうした点において海外のビールブランドは今後日本国内でも苦戦が強いられてくるのかもしれません。
今回のニュースは驚きを隠せないものながら、冷静に考えれば今のビール市場を反映した、あるべき結果だったのかもしれません。ビール離れ、酒離れが叫ばれる昨今・・・基本的には需要は増えるどころか減る傾向にあるわけですから、ブランドが増えればどこかの売り上げが減るのは当たり前ということですね。
筆者も昔飲んだ懐かしい味に思いを馳せながら、最後にこれらのビールを堪能してみようと思います。飲んだことのある人もない人も、ぜひこれを機に最後に「レーベンブロイ」、「バスペールエール」「ベルビュークリーク」を楽しんでみてはいかがでしょうか?
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*1:海外ブランドの商品はお酒に限らずお菓子などもそうですが、レシピとそのブランドの使用権・・・つまりライセンスを獲得し国内工場で製造し販売することがある。基本的には基本的に同一の味わいだが、材料や制作環境までを同じにすることはできないため、微妙に味わいが異なるのが普通