日本では食文化としての歴史が浅いチーズですが、ヨーロッパではチーズは生活に根付くなくてはならない発酵食品です。
地域ごとの特色や知恵を活かした無数のチーズが存在する中で、一見同じに見えるチーズも実はまったく異なるチーズだったということも少なくありません。
特に比較的身近にあって見た目や味に共通項も多いゴーダ、チェダー、パルメザン(パルミジャーノ)チーズは混同しやすいチーズですが、実はそこには明確な違いが存在します。
本記事では代表的なこれら3種のハードチーズの違いを理解しながら、そもそもチーズの種類ごとの違いってなんだろう?という点にも言及していってましょう。
- パルメザン、ゴーダ、チェダーはハードチーズ
- パルメザン、ゴーダ、チェダー…各ハードチーズの産地に注目する
- パルメザン、ゴーダ、チェダーの製法に違いは?
- パルメザン、ゴーダ、チェダーの味、違いはある?
- パルメザン、ゴーダ、チェダーの仲間のチーズ
- パルメザン、ゴーダ、チェダーの違いと特徴のまとめ
パルメザン、ゴーダ、チェダーはハードチーズ
ナチュラルチーズの一種ハードチーズ
まず大前提から確認してきましょう。
- チーズにはナチュラルチーズとプロセスチーズがある
- ナチュラルチーズには白カビ、青カビ、ハードなどのタイプがある
- パルメザン、ゴーダ、チェダーチーズはハード系チーズ
チーズにはナチュラルチーズとプロセスチーズがあり、ナチュラルチーズは特定の製法に則って作られたチーズそのもので、プロセスーズはナチュラルチーズを加熱したり添加物を加えて加工して作られるチーズです。
さらに、ナチュラルチーズには白カビ、青カビ、ウォッシュ、ハード、シェーブルなどといったタイプが存在し、今回挙げたパルメザン、ゴーダ、チェダーチーズはどれもハード系のチーズに分類されるチーズであるということを覚えておきましょう。
ハードチーズとはざっくり説明するとチーズ作りの最中でプレスという工程を加えて水分を抜いて凝縮させてから成形するチーズの製法で、水分が少ないため固く物持ちが良いのが特徴です。
パルメザンはハードチーズ、ゴーダとチェダーはセミハードチーズ
ハードチーズとひとくちにいっても実はハードチーズには硬質系(ハード)と半硬質系(セミハード)が存在します。
一般的には硬質系は水分含有量が38%以下、半硬質系が38~46%程度と定義されています(この辺りは国によっても異なるため一概には言えない)。
製法としては基本的には同じですが、硬質系はカードという乳から酵素の力によって生成される凝固物を加熱することでより凝固させることで水分量をより低くする工程が加わります。
今回取り上げているチーズではパルメザンのみが硬質系、チェダーとゴーダは半硬質系で、実際に手に取ると半硬質系の方が弾力があることがわかると思います。
この時点で3種のチーズにはすでに違いが現れていると言う事ができるでしょう。
パルメザン、ゴーダ、チェダー…各ハードチーズの産地に注目する
パルメザン、ゴーダ、チェダーの最も分かりやすい違いはなんでしょうか?
厳密に言えば製法とそれに伴う味にも違いはありますが、最も端的に分かりやすい違いは産地の違いです。

このように、三種のチーズは生産国とその由来が異なります。
このなかでも特にパルメザンは正式にはパルジャーノレッジャーノと呼ばれ、イタリア本国のDOPという規格に認定されたものは刻印を押され、名実ともに本物のパルメザンチーズの称号を得ることが出来ます。
DOPなどヨーロッパの商品の呼称に関する決まりについてはコチラの記事を参照
www.oishikerya.com
イタリアやフランスは自国の食文化に対する矜持が非常に高いため、その製法や作る場所・原料まで細かく規定していることが多く、パルメザンに関してはイタリアで作られ規格に則ったもののみを示す言葉であるという事が出来るわけです。
ゴーダはオランダを代表するチーズで、今では世界的に愛されているチーズの代表でもあります。
ロッテルダム近郊ゴーダ村を由来にもつチーズで、長期の熟成を経ることで名称が変わることがあります。
www.oishikerya.com
ゴーダを三年以上寝かせるとロマーノプラデラという名で販売されることがある。
世界で最も商業化に成功したチーズとも言われるチェダーは今や本国イギリスのみならず、アメリカやオーストラリアでも盛んに製造され、本国イギリスに逆輸入されることもあるそうです。日本でもプロセスチーズの加工原料としてチェダーとゴーダは大量に用いられています。
パルメザン、ゴーダ、チェダーの製法に違いは?
続いて製法の違いについて見ていきましょう。
チェダーとゴーダは同じ半硬質タイプなので製法に大きな違いはありません。
両者ともに樹脂コーティングされ、時間をかけて熟成、内部にアミノ酸の結晶を作っていきます。
樹脂コーティング
チーズの水分蒸発を防ぎ、菌の繁殖を予防するために特にハード系チーズの外側に付けられるワックス。取り除いて食べる。
ゴーダは昔は樹脂加工していなかったが、効率的な生産のために現在では樹脂加工されている。
ゴーダに関してはカードを取り除く際に熱湯をかけてカードをより凝縮させるという特徴的な工程が存在します。
また、成形サイズが大きいため、内部と外部で塩気にムラが出来てしまい、塩気の薄いところで異常発酵が起きてしまうことがありますが、逆にうまく作られたゴーダは長期熟成に耐えうるものとなります。
それぞれ微妙な製法の違いはあるものの、別種のチーズとしては限りなく近いのがゴーダとチェダーです。
製法が近いチーズは生産者や熟成方法、期間によって味の違いが生じてくるため、この辺りにおいてはチーズの名前そのものにこだわることにはあまり意味がないと言えるかもしれません(ゴーダの方がおいしい、チェダーのほうが良いというような)。
いっぽうでパルメザンはパルミジャーノレッジャーノを名乗るためにイタリアのDOP認定をうける必要があるため、その製法は細かく定められています。
細かいところでは搾りたての牛乳と前日に絞り置いたものを混ぜるのが特徴とされることが多いですね。
パルメザン、ゴーダ、チェダーの味、違いはある?
ここまでで製法や分類の面からパルメザン、ゴーダ、チェダーの違いを見てきましたが、味的な違いはどうでしょうか?
まず、ひとくちにパルメザン、ゴーダ、チェダーといっても、生産者や熟成年数、保存の違いによって味は大きく変わってくるということを知っておきましょう。
特にハード系のチーズの特徴としては熟成によってタンパク質が分解されることで内部にアミノ酸が凝縮され、旨味が強くなっていきます。
年単位の熟成によってアミノ酸の結晶体が出来てジャリジャリした食感を楽しめるようになることもあるほどです。
筆者の経験則では、パルメザン>ゴーダ>チェダーの順で熟成の長いものが多い印象です。
規格の厳しいパルメザンは熟成することを前提にしている部分もあるからなのかもしれません。当然熟成が長くなれば高くなっていきます。
パルジャーノは若くても旨味を感じやすいと思いますが、個人的にはそのまま食べるなら2年くらい熟成したものからがパルジャーノらしい風格を持ってきます。
ジャリジャリとした食感とコクのある旨味、鼻に抜ける香り・・・チーズの王様とも言われるだけあり、やはりその味わいは格別です。
ゴーダも熟成の長いものをちょくちょく見かけます。同じ熟成年数でも半硬質タイプなこともあり、ゴーダの方がパルメザンよりしっとりとしていてなめらかです。
その反面で若いものだと旨味を感じ取りづらいと言えるでしょう。パルジャーノよりは安価なのも嬉しいですね。
チェダーの長期熟成のものは筆者もあまり経験がありません。ざっとネットで調べてもあまり出てこなかったので、やはりそもそもが熟成させることを目的としたチーズではないのかもしれません。
その辺がパルメザンやゴーダと線引きできる部分で、いわば"日常使いのチーズ"というイメージです。
旨味も熟成されたパルメザンやゴーダにはかないませんが、その分チーズ特有のクセは皆無でナチュラルチーズ初心者にも受け入れやすいので日本人にはウケますね。
料理にガンガン使うのにもオススメできます。
まとめると、チーズ単体としての実力は熟成期間が長く旨味の凝縮されたパルメザン、ゴーダに軍配があがりますが、チェダーはコスパがよく料理や日常使いに適していると言う事ができそうです。
パルメザン、ゴーダ、チェダーの仲間のチーズ
最後にパルメザンと同じく硬質系チーズ、ゴーダ・チェダーと同じく半硬質系のチーズで代表的なものをいくつかピックアップしてみましょう。
それぞれ産地や製法に微妙な差があるので食べ比べてるのもオススメです。
代表的な硬質系チーズ
フランスを代表するハードチーズといえば"コンテ"。旨味とミルク由来の甘みとのバランスがよく、やわらかい味わい。加熱調理によってより引き立つという特徴もある。
同じくフランスのミモレット。オレンジ色の見た目と外皮にダニを住まわせて熟成させることで有名。
熟成したミモレットはからすみのような味わいになるため日本でもよく紹介されるチーズです。
イタリアにおいてパルメザンと同等の位置づけにあるハードチーズ。こちらは羊のミルクから作られ、独特の風味とさわやかな香りが特徴。
カルボナーラにも欠かせません。
代表的な半硬質チーズ
ラクレットはチーズ好きなら憧れるチーズフォンデュに使われるチーズ。クセが少ないため、加熱して流動状にしてパンや野菜につけて食べることでいくらでも食べられてしまいます。
パルメザン、ゴーダ、チェダーの違いと特徴のまとめ
以上、パルメザン、ゴーダ、チェダーの製法や味の違いについて見てきました。
味的には大ざっぱにいえば近いものがありますが、チーズには生産国のプライドのようなものがあるので、ぜひそれを感じながら食べ比べてみてほしいですね。日本で言えば地方ごとに譲れない味噌があるのに近い感覚でないでしょうか?
なおチーズは同じ種類でも扱いによって味わいが大幅に変わる繊細な食材です。
そのため「どのお店で」チーズを買うかも最終的な満足度に大きく関係します。スーパーなど冷蔵スペースで適当に保存されているものは避け、必ず湿度や温度を管理しているチーズ専門店から購入するようにしましょう!
近くに専門店がない方は筆者も御用達のオーダーチーズドットコムでお取り寄せもオススメ。種類も非常に豊富で、チーズ専門店といえどこれだけの品ぞろえがあるところはあまりないですよ!
なお、製法については以下の文献を参考にしました。

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